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社説・コラム

社説 在沖縄海兵隊の行方 普天間放置は許されぬ

 日米両政府が、在沖縄米海兵隊のグアム移転計画を見直すことで合意した。

 まず4700人をグアムに先行移転するものの、残り3300人はハワイなどに振り向けることを検討するようだ。

 問題は、もともとグアム移転と一つのパッケージだった米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設計画への影響である。

 日米両政府はこれを解消し、普天間は切り離すことでも合意した。しかし、名護市辺野古への移設は行き詰まっている。

 このままでは、市街地に囲まれ危険性が指摘され続けてきた普天間の固定化につながりかねない。置き去りにされる事態は何としても避けなければならない。

 グアム移転は在日米軍再編に関する2006年の日米合意の柱だった。沖縄の基地負担を軽減するため海兵隊約8千人と家族約9千人を14年までに移す計画だった。

 普天間移設・全面返還とセットにしたのは、海兵隊の縮小で沖縄側に負担軽減をアピールし、これをテコに辺野古へと動かそうという狙いもあったとされる。

 しかし民主党政権の一貫しない姿勢もあって県民の反発を招き、いまだに辺野古への地元理解を得たとは到底いえない状態だ。

 沖縄ではこの際、パッケージを解消し、あらためて普天間の県外移設を求める声が強まっている。当然だろう。政府も、辺野古への移設が困難を極める状況にあることは認識していよう。

 今回の見直し協議はグアムの基地整備の遅れや、オバマ政権がアジア太平洋地域を重視する新たな国防戦略を打ち出したことが背景にある。

 軍事的脅威を強める中国に対抗する上でも、沖縄やグアムに部隊を集中させるのではなく、アジア太平洋の各地に分散させた方が効果的との判断が働いたようだ。

 米議会との関係もある。普天間に進展がなく、グアム移転の費用も膨大だとして、議会側は昨年10月からの会計年度で関連予算をすべて削除した。

 移転計画の再検討は、次の会計年度での予算計上に向けた議会対策の側面もあるとみられる。

 このため今後の政府間協議で、米側が新たな移転経費の負担を求めてくる懸念もある。しかし普天間とのセットを解消することで、日本側が移転経費を持つ理由はますますあいまいになる。

 ここは普天間についても県内移設が本当に必要か、別の選択肢はないのか、あらためて日米協議のテーブルに乗せてもらいたい。

 玄葉光一郎外相が「辺野古が最善だ」と述べるのは、それ以外の候補地が見つからないためでもあろう。ならば、こじれにこじれた県民感情をどう解きほぐしていくというのだろうか。

 この際、日米両政府は辺野古への移設を白紙に戻し、県外や国外も視野に別の道を探るべきだ。グアム移転の見直しは、そのための機会となりうる。

(2012年2月5日朝刊掲載)

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