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社説・コラム

社説 電気料金 制度の抜本見直し急げ

 福島第1原発の事故後、どの電力会社でも火力発電の燃料費が増大している。一般家庭の電気料金に転嫁されかねない状況だ。

 こうした現状を踏まえ、電気料金制度について議論してきた経済産業省の有識者会議が先週、見直し案を固めた。売電コストの算定に当たり、現行の「総括原価方式」の改善を求める内容である。

 近く正式決定し、3月にも省令などを改正するという。安易な転嫁を許さぬよう、経産省は厳しい姿勢で臨んでもらいたい。

 総括原価方式は燃料費や人件費、その他の経費も含めてコストを算定し、一定の利益を上乗せして電気料金を決める。経営の安定が電力の安定供給につながるという公益性を重視する仕組みといってよいだろう。

 ところが、コスト削減努力が甘くなる弊害が指摘されてきた。しかも大口ユーザー向け電力は自由化されたものの、大半の家庭にとって電気は地域独占状態にある電力会社から購入するしかない。いわば言い値で買わされている。

 有識者会議がメスを入れたのは人件費だ。見直し案は規模や事業の似た一般企業の平均給与を基本とし、それ以上は原価への算入を認めないよう政府に厳格な査定を求めた。妥当であろう。

 さらに、公益目的以外の広告宣伝費や自治体への寄付金などもコスト算入の対象外とした。

 福島のような重大事故が起きた以上、もはや原発の安全性を単にアピールするだけの事業は国民感情からも認められまい。こちらはコスト算入以前の問題ともいえるだろう。

 この見直し案に先立ち、東京電力は先月半ば、企業向け電力を4月から平均17%値上げする方針を示した。さらに家庭向けの値上げも検討すると表明している。

 値上げを実施する前に、厳しく原価を再計算するのは当然であろう。ほかにも無駄はないか、リストラを尽くした上で十分な情報を開示すべきだ。

 一方で政府は、原発事故の円滑な賠償のため、電力9社などに拠出を求める負担金を上積みし、2012年度以降は総額で年1500億円にする方針という。

 中国電力は年69億円となる。福島の人たちの生活再建を急ぐ観点での協力は惜しむべきではない。ただコスト削減を徹底することで値上げが避けられるのなら、それに越したことはない。

 本はといえば、火力発電に頼らざるを得ない現状は、これまで再生可能エネルギーの普及促進に消極的だったことの裏返しでもあろう。その意味で、政府が今夏にまとめるエネルギー政策の抜本改革が注目される。

 この際、電力会社のあり方についても発電と送配電部門の分離、地域独占状態の是正など検討すべきテーマは数限りない。

 電力購入の自由化を大口ユーザー中心にとどめず、国民が電源を選択し、価格体系にも納得して購入できる仕組みを築きたい。

(2012年2月7日朝刊掲載)

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