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オバマ氏 ノーベル賞 ヒロシマ 驚きと祝福 実現へ問われる行動

 核兵器廃絶に取り組むオバマ米大統領のノーベル平和賞受賞が決まった9日、被爆地広島に驚きと歓迎の声が広がった。祝福ムードのなかで被爆者たちは、原爆投下国で核超大国のリーダーが受賞を機に、「核なき世界」の実現に向けた行動を加速させるよう期待し、注目している。

 広島県被団協の坪井直理事長(84)は「素晴らしい。予想外だ」と喜び、「核兵器に固執してきた世界の潮流を転換させたのはオバマさんの手腕。受賞を機に廃絶への機運が盛り上がる」。もう一つの県被団協の金子一士理事長(83)も「廃絶への展望が大きく開けた。ぜひ広島を訪れ、被爆地の声を聞いてほしい」と期待を寄せる。

 市民団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」の森滝春子共同代表(70)は「廃絶へさらに動いてほしいという激励が込められたのだろう。今後は不退転の決意で尽力してほしい」と求める。

 中国新聞に連載中の「ひろしま国 10代がつくる平和新聞」ジュニアライターで、昨年秋から「おいでよオバマさんプロジェクト」を紙面で展開したメンバーの一人、広島市立己斐中2年の井口優香さん(14)は「平和賞の影響力は強いと思う。廃絶への後押しになるのでは」と話した。

 一方、元共同通信ワシントン支局長の大島寛・広島修道大教授(61)は「核大国の大統領が核兵器廃絶を唱えたことは画期的だが、実績があるわけではない。今後、核兵器のない世界へ、どう行動するかが問われる」とし、「上院による包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准実現などが当面の試金石になる」と指摘している。


期待の一方 批判も 広島中心部

 ノーベル平和賞の受賞者が「核兵器のない世界」を訴えるオバマ米大統領に決まった9日、広島市中心部の街頭では、賛否が分かれた。核兵器廃絶へ向けたリーダーとしての期待が膨らむ半面、実績が見えず「時期尚早」との批判や被爆地訪問の実現を求める声も目立った。

 東区の主婦水羽純子さん(58)は「受賞を契機に、核兵器廃絶の世界的な動きが加速してほしい」と期待を込めた。帰宅途中の岩国市のアルバイト田中和彦さん(25)も「核兵器をなくすために、さらに頑張ってもらえると思う」と歓迎した。

 大統領就任から9カ月足らずでの受賞に否定的な意見も相次いだ。「まだ外交戦略に対する評価は定まっていない」と安佐南区の会社員的野美歩さん(29)。中区の輸入雑貨店経営有田充実さん(64)は「理念を言っているだけ。核兵器を大量に保有する国のリーダーである事実は変わらない」と語気を強めた。

 呉市の会社員池西孝太郎さん(38)は「平和賞の受賞は、米国のうかつな軍事行動をしにくくするはずだ。くぎを刺すという意味ではよかった」と前向きにとらえた。11月の来日では広島、長崎への訪問はかないそうにない。東区の自営業録沢裕明さん(58)は「受賞するのなら、なおさら広島を訪れる責務がある。被爆の悲惨さを自分の目で確かめてほしい」と訴えた。

(2009年10月10日朝刊掲載)

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