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社説・コラム

発言交差点  『震災がれき』

 震災がれきについて、これまでに手紙、はがき、ファクスとメールで50件を超える意見が寄せられました。現段階の報告をします。

 今のところ、全体の約3分の2が「受け入れるべきだ」、3分の1は「反対」か「慎重に考えるべきだ」との立場からの意見です。

 当初は賛否がほぼ半々でしたが、最近は賛成意見が増えています。大震災から1年。復興が進まぬ被災地の現状と人々の苦境をあらためて痛感する人が多いのでしょう。

 何もしないでいるより、どうすればがれきを安全に処理できるのか。今こそ衆知を集めるときだと私も思います。

 もちろん強引に受け入れればいいとは考えません。福島第1原発の事故は広範囲に放射性物質をまき散らし、国が広域処理の対象とする宮城、岩手県のがれきも汚染された懸念は拭えないからです。

 広域処理の名のもとに汚染を拡散させてほしくない。幼い子どものいる家庭の不安は当然でしょう。

 反対意見の背景に、政府への不信もあるようです。今回の原発事故で相次いだ情報隠しを思えば、無理もありません。政府が広域処理に前のめりになればなるほど国民は不信感を募らせ、がれき受け入れで先行する地域の住民同士が激しく対立する。そんな悪循環を招いています。

 しかし、そうした状況だからこそ、被爆地は声を上げるべきだと考えます。

 事故後の風評被害は、福島の子どもたちに「放射能がうつる」という心ない言葉を浴びせる事態も招きました。

 ところが福島から広島に子どもと移り住み、「そんな言葉での仕打ちを受けたことがない」と感謝している母の声は、先日の「天風録」でも紹介した通りです。

 放射能の怖さを十分に知ったうえで対策を考える。被災地はヒロシマに、そのすべを学びたいはずです。私たちががれきの処理に無言であってはならないと思うのです。

 被災地の痛みを分かち合いつつ、私たちの安心、安全も保っていく。国任せにせず、地域を挙げて前向きに解決策を探っていきましょう。(論説主幹・江種則貴)

(2012年3月13日朝刊掲載)

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