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社説・コラム

社説 再生エネ買い取り 「脱原発依存」の弾みに

 これで「脱原発依存」が一気に進むだろうか。太陽光や風力など再生可能エネルギーで発電された電気は全て買い上げる。電力会社全社にそう義務付ける制度が7月から始まる。

 有識者による調達価格等算定委員会でおととい、参入事業者の希望する買い取り価格が示された。委員会は4月末までに価格や期間について原案をまとめ、枝野幸男経済産業相が5月ごろに決定する。

 脱原発依存に本気で取り組むには、現在は1%にとどまる再生可能エネルギーの普及を強く促す仕組みが必要だ。

 新制度は昨年8月に成立した再生エネルギー特別措置法に基づく。対象は太陽光、風力、中小規模の水力、地熱、バイオマスの5種類。電力会社による買い取り価格を一定期間、固定することで発電市場への参入にめどを付けやすくする。

 普及の道が大きく開くかどうかを左右するだけに、決定過程の透明性が欠かせない。

 中国地方では、多くの企業が大規模太陽光発電所(メガソーラー)の建設を計画している。風力発電でも同様だ。こうした動きを後押しする制度にしなければならない。

 分散型電源となる再生可能エネルギーの普及は、エネルギーの地産地消につながる。地域に関連産業を育て、雇用の確保にもなるだろう。

 課題の一つは、買い取りの対象が新設の発電設備に限られていることだ。既にある風力や小水力発電設備の中には経営が苦しく、事業の中止を迫られているものもある。普及を重んじるなら、既存施設からの買い取りも検討すべきだ。

 買い取り費用は家庭などの電気料金に転嫁される。経産省は当初、標準家庭では制度の開始後10年目に月額150~200円の負担増と見込んだ。民間シンクタンクの試算では料金はもっと高くなるとの指摘もある。負担が重くなりすぎないよう注意しなければならない。

 料金が少々高くなっても、原発に頼らない電気を使いたいという人もいるだろう。7月の制度スタート時には難しいだろうが、発電方法や料金の違いで好みの電気を選べる仕組みも用意すべきではないか。

 気象条件で発電量が変わる不安定さも再生可能エネルギーの弱点である。とりわけ風任せの風力発電には信頼感が薄く、電力会社は安定供給を理由に受け入れ量を制限してきた。

 制度の開始を控え、東日本の3社と中国電力を含む西日本の6社はそれぞれ、自社で受け入れられる量を超えた場合に他社と融通し合える仕組みをつくった。受け入れ可能量が増えれば風力発電が普及しやすくなる。今は周波数が異なる東西間でも電力を融通し合える変換設備を増強すれば、さらに調整力が上がるはずである。

 電力の需給をきめ細かく調整できるスマートグリッド(次世代送電網)の整備ももっと急ぐ必要がある。

 国内の発電量の3割を占めていた原発の代わりをただちに、再生可能エネルギーに求めるのは難しいかもしれない。とはいえ、日本に先駆けて買い取り制度を導入したドイツやスペインは価格を高めに設定し、急速な拡大に成功している。大いに参考にしたい。

(2012年3月21日朝刊掲載)

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