×

社説・コラム

『潮流』 やがて「少数派」は…

■ヒロシマ平和メディアセンター編集部長 宮崎智三

 「独創的な仕事は、少数派から生まれる」。日本人で初めてノーベル賞を受賞した物理学者、湯川秀樹氏の言葉である。今は支持が広がっていなくても、真理であれば、やがて多数派になっていく…。科学が進歩した歴史を踏まえ、自分を鼓舞したに違いない。

 沖縄はもちろん、岩国の米軍も含め米国の外にいる部隊は全て撤退を―。そう主張する人が、秋の米大統領選に向けた共和党の候補指名争いを続けている。

 残念ながら、首位を走るロムニー前マサチューセッツ州知事ではない。追っかけるサントラム元上院議員でもない。4位にいるロン・ポール下院議員だ。

 同じ共和党のブッシュ氏が大統領として火ぶたを切ったアフガン、イラク戦争に反対してきた。個人の自由を重要視する筋金入りの「リバタリアン(自由至上主義者)」とされる。

 在外基地からの米軍撤退論も、政府の役割をできる限り小さくするリバタリアンならではの発想だろう。選挙だけに、他候補とは異なるアピールをしたいとの意識の表れかもしれない。

 少数派でもキラリと光る主張をする人は、一方の民主党にもいる。「平和省」の創設を10年以上も唱えているクシニッチ下院議員だ。非暴力を呼び掛けた2年前の本紙への寄稿を覚えておられるだろうか。

 2005年、ニューヨークの国連本部で言葉を交わしたことがある。穏やかな表情と、平和省をアピールする名刺が印象的だった。

 もはやポール氏に逆転の望みはないだろうが、専門家の予想を上回る健闘ぶりという。若者にも広がる支持が米軍撤退論のためかどうか気になるところだ。

 「少数派は、多数派になるよう努力しなければならない」。湯川氏はこんな言葉も残した。核兵器はもちろん、武器の要らない世界を目指すヒロシマへの激励にも聞こえる。

(2012年3月22日朝刊掲載)

年別アーカイブ