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社説・コラム

天風録 「似て非なるもの」

 かつて「花かつお」はカツオならぬ、豊漁のイワシを救う手だてだった。煮たり干したりしてもまだ余る。それなら削ってしまおう。考えついたのは福山市内の海産物問屋。100年ほど前、たちまちヒット商品となった▲大正、昭和を経て平成の世でも人気は根強い。料理にコクを添える隠し味だが、そのままご飯にかけてもよし。食が進む。ただその後、花かつおと名乗るなら、かつお節を使うよう、網を打たれてしまった▲「似て非なるもの」。確かにそうではあるが、アイデアの勝利だろう。今はカツオ以外は削り節と名を変え、変わらず安価で滋味をもたらす。海のうまみを食卓へと届けてくれる▲こちらはどう見ても迷惑千万な「似て非なるもの」。北朝鮮の自称「衛星ロケット」である。国際社会の非難もどこ吹く風、とうとう発射した。第1書記の力を誇示したかったのだろうが、偽りの名前のまま、あっさり黄海に散った▲かの国の民のことが気に掛かる。国際社会挙げて、コクのある治世へと救う手だてはないものか。永遠の主席、総書記とは似て非なる第1書記。滋味あふれ、民に真に慕われるよう、ひとつここは身を削ってもらいたい

(2012年4月14日朝刊掲載)

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