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社説・コラム

『記者縦横』 低空飛行 自治体物申せ

■益田支局 石川昌義

 手のひらサイズの騒音測定器が、わが物顔で頭上を飛び回る米軍機に動かぬ証拠を突き付けた。浜田市の旭支所(同市旭町)に設置した測定器が3月中、下旬の4日間で、軍用機とみられる騒音を68回も記録したのだ。

 西中国山地の上空は米軍の訓練空域「エリア567」に当たる。取材中、耳をつんざくような低空飛行の騒音を何度も聞いた。くぐもった低いジェット音は、浜田市や益田市の市街地でも日常的に響く。北朝鮮情勢が緊迫する中、測定器は異変を捉えていた。

 浜田市が昨秋以降、米軍機の飛来に神経をとがらす背景には、9月の「事件」があった。山間部の小学校上空であった低空飛行で授業が中断し、児童が相次いで恐怖を訴えた。以来、市単独で米海兵隊岩国基地(岩国市)に訓練中止を要請するなど、物言う姿勢を強める。

 騒音が集中した3月中、浜田市には51件の情報が寄せられた。一方、益田市の担当者は「半年に1回しか件数を集約しないので即答できない」との姿勢だった。自治体の対応には温度差がある。

 1999年6月、萩・石見空港(益田市)で米軍機の緊急着陸を取材した。着陸の理由は「燃料切れ」。給油を終えた後の離陸音には、旅客機とは明らかに違う威圧感があった。振動でガラスが割れる。部品が落下する。さらには墜落…。「米軍機は危険だ」という当たり前の認識を共有するため、浜田市の熱意が各地に広がることを願う。

(2012年4月16日朝刊掲載)

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