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社説・コラム

社説 再生エネ買い取り価格 上乗せ 消費者に説明を

 まずは一歩前進と言えるだろう。再生可能エネルギー特別措置法が7月に施行されるのを控え、太陽光、風力、小水力、地熱などで発電する電力の買い取り価格などが決まった。

 これらの電力を一定期間、電力会社が発電事業者から買い取る仕組みが具体化する。全量、固定価格での買い取りが義務付けられる。これを電力改革と「脱原発依存」を柱にした日本のエネルギー政策の根本的な見直しにつなげたい。

 買い取り価格は太陽光1キロワット時当たり42円。太陽光以外は分野に応じて13円65銭~57円75銭で、買い取り期間はおおむね20年に設定している。

 いずれも事業者の要望に沿った水準に設定された。中国地方でメガソーラーを計画する企業は「30円台半ばでも対応できるよう準備していた。42円が維持されればメリットは大きい」と歓迎する。

 事業者の意欲が高まるかどうかは、新規参入が進むかどうか、買い取り条件が大きく左右する。これについて、経済産業省は調達価格等算定委員会という第三者機関に諮って決めた。

 再生可能エネルギーはもともと、「地域分散型」であり、分野別に見ると、一長一短ある。太陽光や風力は設備が高価であり、一定の投資や用地などが必要だ。気象条件に左右される半面、事業者には安定供給が求められる。

 また、特措法は新規参入を促すのが目的であるため、既存発電施設は買い取りの対象になっていない。こうした実情に対し、地方では不満が募っている。

 中国地方の農山村に多い小水力発電にしても歴史が長いだけに、設備は老朽化している。修理費の捻出も難しい。

 これらも買い取りの対象にし、再生できないか。経産省も検討しているようだ。

 買い取り費用は「賦課金」と称して電力会社が電気料金に上乗せする仕組みだ。経産省はきのう、標準家庭(月約7千円)で初年度の上乗せ分は月約70円という試算を示した。

 買い取り制度が再生可能エネルギー発電の普及につながるのは間違いない。しかし、普及すればするほど、消費者の負担が増すことになり、制度の運用に批判が起きないとも限らない。ジレンマである。

 応分の負担として受け入れてもらうには、国民のいっそうの理解を求める努力が必要ではないか。

 また、長期的には発電事業者の経営努力や競争を促すためにも、買い取り条件の見直しが必要だろう。

 一方、再生可能エネルギーの買い取りによって、電力会社の二酸化炭素対策費などは減少する。これは電力会社の取り分ではなく、実際にコストを負担した消費者に均等に還元すべきものだ。

 「薄く広く」で構わない。消費者への還元が目で見て分かるようにしてほしい。

 まずは再生可能エネルギーを普及させることが先決だろう。「普及しないから、脱原発依存が進まない」という口実は封じたい。

 むろん、省エネによる節電も再生可能エネルギーに次ぐ「電源」として位置付けられよう。これも目に見える形で促進しなければならない。

(2012年4月28日朝刊掲載)

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