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社説・コラム

『潮流』  国会の「原発ゼロ」

■論説委員 金崎由美

  記録的な猛暑だった2010年と、ささやかな節電に励んだ昨年の夏は、正直つらかった。北海道に育った身としては、今夏を想像するだけでげんなりする。

 電力需給の予測を示す数字が気になる。電力不足を示す数字を突きつけられるほど、「再稼働か、さもなくば不便な生活か」と国や電力会社に迫られているような気分になる。

 関西電力は10年並みの猛暑なら電力不足が16%という見通しを示し、政府は大飯原発(福井県)の再稼働を急ぐ。地元おおい町が住民説明会を開いた26日。国会の「原発ゼロの会」などが都内で開いた会合で、原発再稼働をめぐる議論に耳を傾けた。

 出席したのは超党派の議員約20人のほか、脱原発の立場から経済産業相の諮問機関や国家戦略室の委員会に名を連ねる専門家たち。

 「福島第1原発であれほどの事故が起きても、政府と電力会社の問題意識は全く変わっていない」。環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長たちが口をそろえる。政府や電力会社の「壁」を知るだけに、発言には実感がこもっていた。

 国会でエネルギー政策を検討する調査会の設置を目指すという。「経産相の諮問機関は原発依存を減らさないがための議論がまかり通っている」とし、このまま政策の流れができることへの危機感を共有する。

 おおい町の住民説明会で政府は、関電の需給見通しを根拠に原発再稼働の必要性を強調した。「本当に足りないのか」という思いの一方で、「夏は大変なことになる」と心配になった人も多かったのではないか。

 エアコンを使う季節のたびに、数字が気になる。ただ、福島で起きた現実、という原点に立ち返ることを忘れてはなるまい。年中どころか数十年単位でつきまとう被害である。数字にとどまらない、将来を見据えた議論を心掛けたい。

(2012年4月28日朝刊掲載)

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