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社説・コラム

『記者縦横』 被爆体験に触れる重み

■ヒロシマ平和メディアセンター 二井理江

 「原爆の映像を見ると眠れなくなる」と高校3年生。高校1年生は、小学3年の時、原爆資料館(広島市中区)に行って以来、怖くて嫌いになったという。高校2年生は、漫画「はだしのゲン」を途中で読むのをやめたまま、と明かす。

 3人の女子生徒は広島市内に住み、市内の学校に通う。ただ、平和教育を受けても、感情がついていかない。

 実は全員、取材などを通して平和な世界実現に向けて活動している中国新聞のジュニアライターだ。ライターは今、被爆者から体験談を聴く連載「記憶を受け継ぐ」を担当している。順番に祖父母くらいの年代の人と向き合い、耳を傾ける。

 被爆者の多くが、今の彼女たちと同じ10代の時に被爆。取材では、被爆時の状況だけでなく、戦中戦後の食糧難や学校生活、時にはラブストーリーも飛び出す。「あなたにはロマンスないの」と聞かれることもある。

 取材を終えたジュニアライターには、恐怖感や嫌悪感は見られない。被爆者の人柄や時代背景も含めて知ることで、「怖い」「恐ろしい」ではない、目の前にいる身近な人の話として、素直に受け止めている。それが、「広島の子として、もっと知らないといけない」「二度と起きないために核廃絶が必要」といった前向きな感想につながっている。

 10代なら、ジュニアライターではなくても「記憶を受け継ぐ」の取材ができます。「重い」「怖い」などの先入観で尻込みせず、参加してみませんか。

(2012年4月30日朝刊掲載)

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