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社説・コラム

天風録 「放射線対策レシピ」

 縁日さながらの屋台の列。津々浦々のお国自慢やB級グルメも味わえる。ひろしまフラワーフェスティバル(FF)は食の祭典でもある。気がおけない友達や家族連れの頬張る笑顔がまたごちそう。「平和」という隠し味が利いている▲それに引き換え東北では…と連想はつい被災地に及ぶ。とりわけ福島では苦境が続く。食品のカロリーどころか、放射能の単位ベクレルに神経をすり減らす日々。地元紙では4月から「放射線に負けない健康レシピ」と題する連載が始まった▲丹念な水洗いや下ゆでは除染のイロハ。おすすめの食材は野菜だそうだ。カリウムが豊富で放射性セシウムが体内に入りにくくなる。先日は大豆たっぷりのタルト風のおかずも。野菜が苦手な子ども向けの工夫らしい▲筆者は自然食を説く生活評論家の境野米子さん。福島県の教育委員でもある。放射線がより大きく累を及ぼす子どもの体を案じ、ストレスのたまる胸底への気遣いも随所ににじむ▲こどもの日のきのう、FF会場のそこここで「ぱくぱく」「もりもり」の姿が目に付いた。かの地にすれば、うらやむばかりの風景だろう。当たり前のような幸せをいま一度かみしめる。

(2012年5月6日朝刊掲載)

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