社説 国の節電要請 夏乗り切る知恵絞ろう
12年5月17日
列島各地は久々に夏日となった。「節電の夏」への備えも待ったなしといえよう。
国内で原発稼働ゼロの事態を踏まえ、政府がこの夏の電力需給対策を打ち出した。電力会社7社の管内ごとに目標数値を立て、節電を要請している。
中国電力の管内は、原発なしでも電力は足りる。しかし原子力への依存度の高かった関西電力などに融通するため、5%の節電が必要になるという。
安全対策が十分尽くされないままの再稼働よりは、節電という我慢を選ぶ人も多いはずだ。原発に頼らずに夏をどう乗り切るかを前提に、官民挙げてもっと知恵を絞り合いたい。
政府はおととし並みの記録的猛暑になれば電力不足の恐れがあるとして、関西、九州、北海道、四国の4電力の管内で計画停電の準備にも入るという。福島第1原発の事故直後の昨年3月、東京電力が実施したことは記憶に新しい。
とりわけ関西は14・9%足りないとの予測である。大口需要家に罰則付きで節電を強いる使用制限令も検討するようだ。
しかし政府や関電の示す不足量が「過大では」と指摘されるたびに低くなってきたのも確かだ。現在の数字なら大飯原発3、4号機(福井県)を動かせばピンチが解消されるという。再稼働に都合のいいデータだとの受け止めもあろう。
猛暑ではない場合も含め、需給予測をさらに精査して議論する必要もあるのではないか。
これまで政府や電力会社は「再稼働ありき」にこだわるあまり、節電への努力を怠ってきた感が否めない。福島の事故後も「オール電化」推進の旗を降ろしていない。
需要が集中する時間帯とそれ以外で料金に差をつけるなど、節電を促す工夫を尽くせば不足量はもっと減るだろう。
とはいえ工場の操業などがどうなるか、企業の不安も強い。地域ごとに電力会社が自治体や企業・団体と十分に話し合い、ピーク時の需要を減らす「計画節電」を講じる手もあろう。
病院や福祉施設、公共交通などへの配慮も求められる。何より日々の需給に関するきめ細かい情報提供は欠かせない。
それでも計画停電の恐れはないとはいえない。いざというときに住民の命と安全を守る手だては当然尽くしておくべきだ。
「原発なしの夏」には大きな意味がある。政府が掲げる「脱原発依存」を後押しするだけではない。電気の大切さを肌で知るとともに、過度に依存してきた現実をじっくり考えることにもなるからだ。
節電のさまざまな工夫は、今後の財産となろう。電力会社の縦割りを超え、日本全体で電力を融通し合うやり方も供給体制の改革につながるはずだ。
むろん私たち消費者の覚悟と心構えも問われてくる。島根原発を抱える中国地方でも、しっかりと節電を積み重ねたい。
まずは身近なところからである。職場では不要な照明のほか、電子機器のスイッチをこまめに切る。家庭でも健康に響かない範囲で、エアコンを控えるか設定温度を上げる―。
ゴーヤーやアサガオで窓際を覆う「緑のカーテン」づくりは、今からでも間に合う。こうした気遣いは、地球温暖化防止への一助ともなろう。
(2012年5月17日朝刊掲載)
国内で原発稼働ゼロの事態を踏まえ、政府がこの夏の電力需給対策を打ち出した。電力会社7社の管内ごとに目標数値を立て、節電を要請している。
中国電力の管内は、原発なしでも電力は足りる。しかし原子力への依存度の高かった関西電力などに融通するため、5%の節電が必要になるという。
安全対策が十分尽くされないままの再稼働よりは、節電という我慢を選ぶ人も多いはずだ。原発に頼らずに夏をどう乗り切るかを前提に、官民挙げてもっと知恵を絞り合いたい。
政府はおととし並みの記録的猛暑になれば電力不足の恐れがあるとして、関西、九州、北海道、四国の4電力の管内で計画停電の準備にも入るという。福島第1原発の事故直後の昨年3月、東京電力が実施したことは記憶に新しい。
とりわけ関西は14・9%足りないとの予測である。大口需要家に罰則付きで節電を強いる使用制限令も検討するようだ。
しかし政府や関電の示す不足量が「過大では」と指摘されるたびに低くなってきたのも確かだ。現在の数字なら大飯原発3、4号機(福井県)を動かせばピンチが解消されるという。再稼働に都合のいいデータだとの受け止めもあろう。
猛暑ではない場合も含め、需給予測をさらに精査して議論する必要もあるのではないか。
これまで政府や電力会社は「再稼働ありき」にこだわるあまり、節電への努力を怠ってきた感が否めない。福島の事故後も「オール電化」推進の旗を降ろしていない。
需要が集中する時間帯とそれ以外で料金に差をつけるなど、節電を促す工夫を尽くせば不足量はもっと減るだろう。
とはいえ工場の操業などがどうなるか、企業の不安も強い。地域ごとに電力会社が自治体や企業・団体と十分に話し合い、ピーク時の需要を減らす「計画節電」を講じる手もあろう。
病院や福祉施設、公共交通などへの配慮も求められる。何より日々の需給に関するきめ細かい情報提供は欠かせない。
それでも計画停電の恐れはないとはいえない。いざというときに住民の命と安全を守る手だては当然尽くしておくべきだ。
「原発なしの夏」には大きな意味がある。政府が掲げる「脱原発依存」を後押しするだけではない。電気の大切さを肌で知るとともに、過度に依存してきた現実をじっくり考えることにもなるからだ。
節電のさまざまな工夫は、今後の財産となろう。電力会社の縦割りを超え、日本全体で電力を融通し合うやり方も供給体制の改革につながるはずだ。
むろん私たち消費者の覚悟と心構えも問われてくる。島根原発を抱える中国地方でも、しっかりと節電を積み重ねたい。
まずは身近なところからである。職場では不要な照明のほか、電子機器のスイッチをこまめに切る。家庭でも健康に響かない範囲で、エアコンを控えるか設定温度を上げる―。
ゴーヤーやアサガオで窓際を覆う「緑のカーテン」づくりは、今からでも間に合う。こうした気遣いは、地球温暖化防止への一助ともなろう。
(2012年5月17日朝刊掲載)