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社説・コラム

社説 G8サミット 求心力の低下否めない

 このところ「仲良しクラブ」や「親睦会」と称される。形骸化が指摘されて久しい主要国(G8)首脳会議(サミット)である。経済成長に行き詰まり借金にあえぐ大国が目立ち、国内総生産(GDP)で世界2位の中国は入っていない。

 米ワシントン郊外で開かれた今年のサミットも、さほどの成果はなかったというほかない。欧州の債務危機、北朝鮮やイランの核問題、シリア情勢など懸案はめじろ押しだが、踏み込んだ提案は乏しく、消化不良感が残ったからだ。

 議長国である米国のオバマ大統領は、秋の再選を目指し、いっそうのリーダーシップを示したかったはずである。水を差したのがロシアのプーチン大統領だ。「組閣に専念する」という理由で欠席した。

 ロシアがG8の全日程に参加するようになった2003年以降で、大統領の欠席は初めてという。G8の求心力の低下を如実に物語っている。

 もちろん緊迫した世界情勢下で主要国首脳が率直に意見を出し合い、結束を強めること自体に一定の意義もあろう。最大の焦点となった欧州危機では「ギリシャはユーロ圏にとどまるべきだ」との認識で一致した。

 当然である。ユーロ圏から離脱する事態を迎えれば、金融システムが大混乱し、世界経済に打撃を与えかねない。

 危機からの脱却には、財政再建だけでなく経済成長も同時に追求するほかない―。そうした考えを各国首脳が再確認したことこそ、今サミットの最大の収穫といえそうだ。

 ただ、主要国がほぼ共通して頭を抱える難題である。スローガンにとどめず、各国がどう協働して解決するかが問われている。この点で、国際社会はもっと具体的な行動計画を期待していたはずだ。

 日本も例外ではない。野田佳彦首相は、昨年11月にフランス・カンヌであった20カ国・地域(G20)首脳会合に続き、今サミットでも消費増税を国際公約に掲げた。しかし、増税と経済成長をどう両立させていくのか。各国首脳も、そこが聞きたかったに違いない。

 理念ばかりで行動が伴わないいらだたしさは、3度目の核実験が懸念される北朝鮮問題への対応でも浮かび上がった。

 野田首相は「悪行に対価を与えない意思を明確に示すべきだ」と述べ、協議をリードしたとされる。

 だが今月半ばの日中韓首脳会談でも、北朝鮮のお目付け役である中国に影響力を及ぼすことはできなかった。核実験阻止に向けた3国連携に合意したが、中国の反発で共同宣言には盛り込まれなかった経緯がある。

 サミットでいくら主要国が合意に至っても、実行力を伴わなければ意味がない。世界から、ますますそっぽを向かれてしまうだろう。

 今や経済分野を中心に、世界を動かす主要な役回りは中国やインドなど新興国を交えたG20に移行したとの指摘も根強い。

 サミットの必要性も含め、G8メンバー各国は自ら、その存在意義を問い直す時にきているといえよう。

 いかに国際社会に貢献できるか。「仲良しクラブ」から脱却する鍵は、その原点に立ち返ることにほかなるまい。

(2012年5月21日朝刊掲載)

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