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社説・コラム

社説 PKO法20年 国際貢献の意味検証を

 夜を徹して審議を遅らせる野党。あの国会での「牛歩戦術」は忘れがたい。

 紛争後の地域への自衛隊派遣を定める国連平和維持活動(PKO)協力法が成立して、きょうで20年になる。

 当時は国論が割れ、自民党政権が強い反対を押し切る格好だった。それに比べると、今は国際協力の手段として容認する国民が増えたのは確かだろう。

 しかし海外で武力行使を禁じる憲法に抵触するかどうかは、いまだにグレーゾーンと言わざるを得ない。

 日本のPKO参加が、どんな状況の中で持ち上がったか。1991年の湾岸戦争が契機となったのは間違いあるまい。

 日本は米国などから「小切手外交」を批判され、人的貢献を迫られる。そしてペルシャ湾の機雷処理に海上自衛隊が出動し、海外派遣の封印を解く。

 カンボジアへの派遣をにらんだPKO協力法の動きも、その延長線上にあったといえよう。

 だが紛争地でのPKOは本来、危険を伴う。そこで協力法に書き込んだのが「5原則」。停戦合意の成立や武器使用は最小限にすることが柱である。

 時の政権からすれば、平和憲法を持つ日本が何とか自衛隊を出すための苦肉の策だったのだろう。とはいえPKOに参加するうえで譲れない歯止めであることは忘れてはならない。

 今はどうだろう。自衛隊は既に計14件、延べ人員で8千人以上のPKO派遣を積み重ねてきている。おととしからのハイチでの活動は大地震の復興支援に従事し、国際社会からも高く評価されている。

 ただ肝心の原則が揺らぎつつある印象は拭えない。安全などを慎重に検討しないままの「参加ありき」に陥っていないか。

 その象徴が4月から自衛隊の活動が本格化した南スーダンPKOだろう。昨夏独立したばかりの国。治安に難ありと防衛省側は慎重だったが、外務省と官邸が押し切った。石油資源確保の思惑を指摘する声もある。

 いま現地では、北隣のスーダンとの紛争が悪化する懸念が強まっている。状況によっては撤退をためらうべきではない。

 もう一つの危惧は、国民がPKO参加に慣れっこになる間に、なし崩し的に自衛隊の海外派遣が拡大したことだ。

 インド洋給油支援やイラク復興支援、ソマリア沖の海賊対策などである。むろん国際貢献の側面もあろうが、米国の軍事戦略との一体化は明らかだ。

 併せて海外での活動を前提に輸送艦や護衛艦などが大型化し、後方支援拠点としての呉基地の機能も強化されている。

 20年の節目を機に、こうした流れをもう一度、検証しておくべきではないだろうか。

 いま政府・与党にはPKO参加をめぐり、武器使用基準などを一段と緩和する動きがある。「他国並み」に活動を広げていくためだ。宿営地の共同防衛も対象に加える案もある。

 集団的自衛権の行使にもつながりかねない。小手先の法改正で前に進めるのは許されまい。

 PKOは軍事面だけではない。民生支援や行政機構の再生などで幅広い人材が求められる。自衛隊ありきではなく、非政府組織(NGO)などとも連携した「日本モデル」の人的貢献も進める必要があろう。

(2012年6月15日朝刊掲載)

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