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社説・コラム

中国新聞 政経講演会 消費者問題研究所 垣田達哉代表

危険性 個々で見極めを

 中国新聞社と中国経済クラブは27日、広島市中区の中国新聞ビルで中国新聞政経講演会を開いた。消費者問題研究所の垣田達哉代表が「本当に大丈夫?食の安全―放射能の影響から食肉、健康食品まで」をテーマに話した。「食品の放射線量がどこまで低かったら安全か、などを示す明確な科学的データはない。結局は個々が危険性を見極め、食べるかどうかを判断するしかない」と語った。要旨は次の通り。(川井直哉)

 国際放射線防護委員会によると、被曝(ひばく)すると放射線によって細胞が傷つけられ、将来がんになって死亡する危険性がアップする。

 日本人ががんで死亡する割合は、男性26・1%、女性15・9%。しかし、100ミリシーベルトの被曝で、亡くなる割合は約0・5ポイント上昇するという。

 しかし、低線量の被曝や、放射性物質が含まれる水や食料を食べたり飲んだりして内部被曝した場合の健康への影響については、今の科学ではよく分からない。

 ただ、放射性物質が発がん物質ということは、世界中の科学者が認めている。放射性物質が検出される食品には、線量が国の基準より低くても、発がん物質が含まれていることに変わりはない。また、放射性物質はある量を超えて摂取すると発病するなどの「しきい値」もないとされる。

 首都圏などの一部の人々が抱える不安の原因は、この点にある。例えば、いまだに学校給食の代わりに弁当を持たせる親がいる。不安や発がん物質を避けたいという親心は理解できる。最終的に、どの食品を選ぶか、安全性をどう評価するかは、個々の家庭で判断するしかない。

 福島第1原発から大量に放出された放射性物質のセシウム137の半減期は30年。放射能が半分になるまで30年掛かる。60年後も4分の1、90年後も8分の1が残ることになる。放射性物質は非常にやっかいなものだ。

 食品添加物の問題もある。同じ添加物を継続して食べたり使ったりしているとアレルギーになる可能性があり、気を付けなくてはいけない。

 ことし5月、赤色の着色剤のコチニール色素に対して消費者庁が注意を喚起した。食品に含まれているほか、口紅などの化粧品にも使われている。アレルギーの事例が報告されており、女性は特に注意が必要だ。

かきた・たつや
 1953年岐阜県生まれ。77年慶応大商学部卒。テック電子(現東芝テック)などを経て、97年から現職。2004年、文部科学省の学校給食用食材の安心安全を確保するための協力者会議委員を務めた。

(2012年6月28日朝刊掲載)

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