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社説・コラム

社説 再生エネ本格始動 地域振興につなげたい

 正真正銘の「再生可能エネルギー元年」となりそうだ。太陽光や風力、地熱などでつくった電力の固定価格買い取り制度がきのう始まった。原発に依存しない、持続可能な社会に転換できるかどうかの鍵を握る。

 普及を加速させる意向から、買い取り価格は発電事業者の要望をほぼ満たす水準となった。最長で20年間、電力会社に一定の価格で全量買い取りを義務付けている。新規参入組も収支の見通しが立てやすいようだ。

 中国地方では、計画段階の設備を含め、太陽光と風力の発電能力を足すと原発1基分の出力に相当するという。

 とりわけ1キロワット時当たりの買い取り価格が税込み42円と最も高い太陽光で、「メガソーラー」と呼ぶ大規模発電所の稼働や計画が目覚ましい。中国5県全県で少なくとも計22カ所に上る。一層の普及が期待できよう。

 ただ、企業の視線が再生エネ市場に集まる一方で、地域に還元される恩恵はまだ乏しい。土地や日当たり環境の資源をみすみす提供するだけ。そんな現状にとどまってはなるまい。

 地域自らが発電事業をおこせば雇用の場が開けよう。売電で得た収入を再投資することで、エネルギーの「地産地消」や持続可能な地域づくりが現実のものとなってくる。

 その点、既存の発電施設について政府が方針転換し、新制度の買い取り対象に条件付きで追加したことは一定に評価できる。地域の再生エネ資源を再評価する機運をさらに高めたい。

 中国地方には小河川や農業用水路などを使った小水力発電の設備が多い。間伐材を生かすバイオマス発電も検討したい。

 本社のアンケートでも、中国5県の8割近い市町村長が原発の全廃や削減を求め、その理由として3割以上が「自然エネで代替可能」と答えている。その具体化に向け、自治体の知恵と実行力が試される。

 新制度にも弱点はある。一つは、転換のコストが家庭や企業の電気料金にはね返ることだ。本年度については、標準家庭で負担分が全国平均で月87円ほどかさむ。

 電力の消費者が応分の「痛み」を分かち合い、再生エネ普及を後押しする仕組み。どこまで我慢できるだろうか。

 消費者が電力のつくり手の側に回り、転換のメリットにあずかれる仕組みが望まれる。先進地では、自治会や生協が集会所や幼稚園の屋根に太陽光パネルを載せたり、市民の出資でファンドをつくったりする動きに弾みがついている。

 太陽光パネルは昨年、海外で半値になったという。今後もコスト減が見込める。とはいえ、普及が進んで電気料金が高騰し過ぎる事態となれば、買い取り価格の見直しは避けられまい。

 弱点のもう一つは、自然頼みという点だ。夜は動かない太陽光発電と風任せの風力発電とを組み合わせた、ハイブリッド発電所という欧州での試みは参考になろう。日本では安定した地熱発電も開発の余地がある。

 世界全体の昨年の再生エネ投資額は、2007年の約2倍に。先進地の成功と失敗に学ぶことで、出遅れを取り戻したい。

 もちろん、夜更かしから朝型に切り替えるといった、再生エネ時代に沿うライフスタイルへの転換も忘れてはならない。

(2012年7月2日朝刊掲載)

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