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核軍縮 取り組み相次ぐ 多国間の交渉へ前進

■ヒロシマ平和メディアセンター編集部長 江種則貴

 核兵器削減に向けた国際社会の取り組みが相次ぐ。米政府は保有する核兵器を半減すると表明し、日本が国連に提出した核廃絶決議案の共同提案国にも加わった。核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)の報告書最終草案も大胆な削減目標を盛り込むことが明らかになった。廃絶へのステップを刻む決意表明や提案を評価したい。

 むろん、いずれも「ゼロ」というゴールを明確に描ききれていないのは残念だ。米国の半減表明も、これまでのペースからすれば当然といえる数値目標。核兵器のない世界を目指すオバマ大統領の有言実行策の一つとして、超大国の自主努力をアピールしたい側面もあるのだろう。

 ただ「冷戦の遺物」の象徴とされる戦略核だけでなく、戦術核など非戦略核も含めた削減目標である点は注目すべきであり、戦術核への依存度が強いロシアを巻き込む効果が期待できる。さらに、中国など他の保有国を含めた多国間の包括的な核削減交渉に向けた地ならしとなるなら、大いに歓迎したい。

 ICNNDの報告書最終草案が「2025年までに世界中の核弾頭を千以下に」としている点も、従来の草案に比べると前進だ。廃絶の期限を明確にうたわないのはもどかしいが、逆に到達可能な目標としての説得力が強まったと考えたい。

 半面、保有国による核の先制不使用宣言を求める時期を「2025年まで」に先送りしたのは、被爆国日本のメンバーの抵抗が影響したとされる点も含め、失望を禁じ得ない。

 そのICNNDの被爆地での論議が始まる。メンバーに問われるのは、核兵器はなくせるし、なくすべきだとの揺るぎない信念を持てるかどうかではないか。「負の遺産」の解消は、 れを開発した人類の責務との認識を踏まえ、将来を見据えた論議となるよう期待したい。

(2009年10月17日朝刊掲載)

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