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社説・コラム

被爆者支援 福井の中島住職に聞く 原発再稼働の連鎖止めたい

 9日、フル稼働した関西電力大飯原発3号機(福井県おおい町)の半径20キロ圏内に全市民が暮らす福井県小浜市で長年、反原発を訴えてきた住職がいる。明通寺の中島哲演さん(70)。現地の被爆者支援にも携わってきた。再稼働の受け止めや被爆地への期待を聞いた。(田中美千子)

 ―大飯原発の再稼働をどう受け止めていますか。
 「想定外の事故は起こりうる」と想定する謙虚さこそ、福島第1原発事故の教訓だ。第二のフクシマが起きてから全面停止するのでは遅い。各地の原発が動きだす「再稼働の連鎖」を食い止めたい。

 ―野田佳彦首相は「国民の生活を守るため」と再稼働を決めました。
 二つの言葉が呪文のように繰り返された。一つは「地元に雇用がなくなる」という不安。もう一つは「夏の電力不足を乗り切れない」という宣伝だ。いずれも本当かどうか検証されてもいない。そもそも国民の安全を守るためなら、再稼働させるべきでない。

 ―反原発運動を始めたきっかけは。
 学生時代、友人に連れられて参加した平和行進で広島の被爆者に出会ったことだ。差別の目から隠れるように生き、放射線障害に苦しむ姿に衝撃を受けた。1968年、小浜市に原発建設の話が持ち上がったが、有権者の過半数の反対署名を集め、話を押し戻した。

 ―被爆地広島に何を期待しますか。
 フクシマでは原子力の平和利用の名目で新たな被曝(ひばく)者を生んだ。被爆者と被曝者の苦しみは共通する。脱原発を共に訴えてほしい。広島の声は誰よりも影響力があるからだ。

なかじま・てつえん
 1942年、福井県小浜市生まれ。東京芸術大中退、高野山大卒。68年から被爆者援護法が成立した94年まで、広島、長崎に原爆が投下された日に合わせ、毎月6、9日に托鉢(たくはつ)を続けた。広島の医師を小浜市に招いての被爆者の健康診断や、被爆者健康手帳の取得支援にも取り組んだ。「原発設置反対小浜市民の会」事務局長を務める。

(2012年7月10日朝刊掲載)

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