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社説・コラム

天風録 「ミサゴとオスプレイ」

 珍しい野鳥ミサゴが巣作りの場に選んだのは、なんとNHK松江放送局の無人カメラの真ん前だった。おかげで、つがいの体当たりの子育てをつぶさに見ることができた。偶然がもたらした貴重な映像をテレビで眺め、心和ませた方もおられよう▲水辺に近い山中である。鉄塔にこしらえた巣には3羽のひなが。両親はせっせと餌の魚を与え、羽を広げて雨から守る。襲いかかるカラスの群れにも立ち向かう―。子どもたちも安心しきっているように見えた▲巣はほかほかとあったかそうだが、タカの仲間で風貌はおっかない。ぎらりと光る目、鋭いかぎ爪。上空から水中の魚を目がけて急降下して捕まえる。見事なハンターぶりだ▲そんな姿に重ねたのだろう。米軍のあの輸送機の愛称も「ミサゴ」である。英語でオスプレイ。あちこちで墜落やトラブル続きだが、それでも近く岩国基地に運び込むという。安全だと言い張って▲目と鼻の先の宮島も瀬戸内海有数のミサゴ繁殖地。豊かな海と森、穏やかな空が営みに寄り添う。オスプレイの方は沖縄に去ったとしても戻って飛び回る腹づもりらしい。不安をかきたてる鉄の鳥など、どこでも見たくはないのだが。

(2012年7月15日朝刊掲載)

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