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社説・コラム

『スポットライト』 今語りたい 戦後の記憶

復興期の広島の絵を原爆展に出展した本川小(広島市中区)卒業生

古沢知子さん(70)=松江市上乃木

 青空の下、校庭で運動会の玉入れに興じる児童―。爆心地近くの本川小1年だった1948年に描いた絵を、松江市内であった原爆展で展示した。

 復興期の広島を描いた絵は、前年に画材を贈ってくれた米国牧師への同小児童の返礼だった。2006年、米国の教会が保管していた48点が見つかり、広島での展示も実現した。「人の善意でつながってきた絵なんです」と話す。

 47年、父親の転勤で熊本県から広島市に移住。やけどの痕が残る同級生たちと、がれきの中から熱でゆがんだ食器を見つけ、ままごと遊びをした。

 結婚で広島を離れ、原爆の話題からは遠ざかった。戦後60年を迎えたころ、当時の親友から初めて、自分をかばい大やけどをした母親の最期を救護所でみとった体験を聞き衝撃を受けた。「被爆者本人にはつらすぎて語れないことも多い。私だからできることがあるかもしれない」

 地域の小学校で児童に話をしてほしいと知人から誘われている。「少し荷が重い。でも決心がつけば挑戦したい」(明知隼二)

(2012年7月18日朝刊掲載)

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