×

社説・コラム

天風録 「安心のメッセージ」

 声は年齢を重ねるほど良くなるという。元NHKアナウンサーの加賀美幸子さん。自著にこうも書いている。「声は声だけでは成立しない。声には言葉が伴い、言葉には常に内容と心が伴う」▲さて津々浦々で声をからすのは選挙戦の常だ。山口県では16年ぶりのトップ交代となる知事選が中盤を迎えた。原発、財政、高齢化、雇用…課題は山積みである。きょうは土用の入り。夏の選挙とはいえ、いつも以上に暑い、いや熱い▲その選挙戦と符合するように海路、岩国に近づくのはオスプレイ。米国側に、陸揚げに反対する地元の声に応える気配はない。野田佳彦首相も「配備自体は米国政府の方針だ。どうこうしろという話ではない」▲米国と徹底して話し合うと、当時のリーダーが熱く語った政権交代のころ。その熱気はどこへやら、基地の問題に関して「アメとムチ」は以前より露骨だ。岩国への先行搬入方針が浮上したのは、地元が待望していた新空港の開港日が決まった日だった▲国民、県民の安心・安全をめぐる論議は、冷めてもらっては困る。知事選4人の候補者にはもうひと踏ん張り、内容と心が伴う言葉で未来を語ってもらいたい。

(2012年7月20日朝刊掲載)

年別アーカイブ