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社説・コラム

『記者縦横』 平和学習 1年分の自信

■ヒロシマ平和メディアセンター 増田咲子

 新潟県長岡市の南中から、生徒が脚本も手掛けた平和劇のDVDが届いた。空襲被災者のインタビューも交えた1時間半の大作。1年かけて取り組んだ平和学習の集大成だ。

 長岡市は、真珠湾攻撃を指揮した連合艦隊司令長官の山本五十六の出身地。1945年8月1日の空襲で、約1500人が亡くなった。犠牲者を慰霊する「長岡花火」を題材にした大林宣彦監督の映画が8月、広島市内でも上映される。

 昨年来、南中は中国新聞のジュニアライターと交流を重ねている。きっかけは、被爆地広島の中学生が平和についてどう考えているか知りたいとの南中生の素朴な疑問。昨年夏、ライター2人を長岡市に招き、平和について意見交換。私も同行した。ことし3月には、南中生が修学旅行で広島市を訪れた。

 平和学習の柱は「知る」「考える」「行動する」。劇も、その一環だ。戦争の悲惨さを語り継ごうと挑んだ。約千人の観客を前に、真珠湾攻撃から長岡空襲、復興花火の打ち上げまで演じ切った。

 南中生がどう変わったか、アンケートによく出ている。「戦争のない世界をつくれると思うか」の問いに「はい」と答えた生徒は、昨年5月の54%から1年後には80%に増加。「行動」が、自信につながったのだろう。

 一方の広島。原爆投下の日時さえ正確に答えられない子どもが増えている。原爆や戦争を今の問題として捉えてもらうには、どうすればいいか―。あらためて考えさせられる。

(2012年7月23日朝刊掲載)

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