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社説・コラム

『潮流』 似て非なるもの

■論説副主幹 佐田尾信作

 マングローブ林の干潟でひと休みし、本島北部の東海岸を車で北上する。沖縄県東村(ひがしそん)。このあたりまで来ると観光客もあまり目立たない。生産量日本一のパイナップルと、ブロッコリーのように茂った照葉樹林イタジイ(スダジイ)の景観を誇る静かな丘だ。

 道すがら突如テント村が現れた。米軍ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の建設に反対する高江地区住民らの座り込み。しばし彼らと立ち話をし、再びハンドルを握る。4年後、あのオスプレイ配備で騒然となるとは思いもせず…。

 高江のヘリパッド建設は米軍北部訓練場の一部返還を条件に浮上した。普天間飛行場(宜野湾市)の移設を柱にした1996年の日米特別行動委員会(SACO)合意に基づく。

 だが、SACO合意の真相を究明する人たちは当初から疑っていた。なぜ既存の施設を使わずわざわざ造成するのか、ヘリパッドは実は「オスプレイパッド」ではないか、と。

 回転翼と固定翼を併せ持つオスプレイなら従来のヘリと違い、短距離滑走離陸も可能だ。その訓練は狭い場所ではできないが、平たんな台地が広がる「ブロッコリーの森」なら…。

 今、その疑念は当たってしまった。オスプレイを積んだ民間輸送船が米本土を出港後、高江で工事は再開された。ヘリパッドを容認してきた村長も「オスプレイなら前提が違う」と異を唱え、地元紙社説は「なぜ知事は移設反対に転じないのか」と問う。

 きのうは土用の丑(うし)の日。ウナギ高騰の折、かば焼きそっくりの豆腐をスーパーのチラシで見つけ、そのアイデアに感心した。「似て非なるもの」は世に多々あり、時に人をなごませる。

 だが、ヘリパッドとオスプレイパッドでは、誰でも首をかしげるだろう。化けの皮がはがれた以上、早く幕を引いた方がいい。

(2012年7月28日朝刊掲載)

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