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社説・コラム

天風録 「田芋パイ」

 沖縄の米海兵隊普天間飛行場近くに暮らす友人から菓子箱が届いた。地元宜野湾市の特産、ターンム(田芋)をあんにしたパイだ。添えられた手紙に「お口に合いますか」と気遣いの言葉。だが素朴で食べ飽きない甘さは、お裾分けした周囲にも大受けだった▲「オスプレイで大変です」との近況報告も。確かに岩国基地に陸揚げされている垂直離着陸輸送機はやがて普天間に向かう。パイのお返しがオスプレイかと思われそうで、間の悪いこと、この上ない▲米国で試乗した森本敏防衛相が「想像以上に飛行が安定していた」と話した。正直な感想かもしれないが、海兵隊の受け売りに聞こえてしまう。パフォーマンスにすぎないと沖縄や岩国が反発するのも無理はない▲気になる騒音は「それほどでもない」という。裏返せば、それなりにうるさいのだろうか。ここは中途半端な甘い言葉より、きっちりしたデータを明かしてほしい▲田芋とは飛行場そばの水田で取れる里芋の一種。煮てすりつぶしたり空揚げにしたりと、琉球料理には欠かせないそうだ。普天間の跡地に田芋を植えて産業振興を図りたい―。甘言を口にするなら、米国にそう伝えてみては。

(2012年8月8日朝刊掲載)

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