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社説・コラム

核の非人道性に焦点を 国連の軍縮担当上級代表に聞く 

 広島原爆の日の6日、広島市の平和記念式典に参列した国連のアンジェラ・ケイン軍縮担当上級代表が中国新聞の取材に応じた。ケイン氏は「核兵器の非人道性に焦点を当て、国際人道法違反と訴える世論の形成を」と強調した。(田中美千子)

  ―核軍縮の動きが停滞しています。
 5月にウィーンであった核拡散防止条約(NPT)再検討会議の第1回準備委員会で、多くの参加国が核軍縮の遅れを指摘した。

 米国とロシアが核弾頭の削減に合意するなど、進展がないわけではない。しかし、保有国は核兵器の近代化も進めている。インドやパキスタンはNPTに未加盟のまま。何より保有国がいまだに核兵器を防衛戦略の柱と位置付けていることが問題だ。

  ―広島市長は、NPT再検討会議の誘致を表明しています。
 初めて広島を訪れ、この地に来る意義を実感した。原爆の悲惨さを体感できる。広島開催が実現したら素晴らしいと思うが、現実的には難しい。例えば、大使館が東京に集中していることがネックになる。広島から遠く、来日する外交官たちを支援しにくいからだ。

 ―東アジアの核軍縮の課題は。
 NPTからの脱退宣言をした北朝鮮を再びNPTの枠組みに入れることだ。「原子力の平和利用」の権利だけ享受した、と批判されている。核の監視、検証などのシステムを機能させ、より平和な世界を保障するためには全ての国がNPTに加盟すべきだ。

  ―被爆国にどんな役割を期待しますか。
 NPT再検討会議第1回準備委員会でノルウェーやスイスなど16カ国が核兵器の非人道性を訴える声明を出し、注目を集めた。国際人道法に反する、と法的な議論に持ち込むことで核軍縮への効果も期待できる。16カ国の中にいない日本もその輪に入るべきだ。  広島は重要な役割を果たしている。原爆の悲惨さを訴える声は世界中に届いている。誰にもできないこと。発信し続けてほしい。

アンジェラ・ケイン
 48年、ドイツ・ニーダーザクセン州生まれ。欧州の民間企業や世界銀行勤務を経て国連に入り、政治問題担当事務次長補や行政管理局事務次長などを歴任。12年3月から現職。

(2012年8月13日朝刊掲載)

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