×

社説・コラム

天風録 「歌の力」

 ♪原子力は要らねえ 危ねえ…。3年前世を去ったロック歌手、忌野清志郎さんが作詞した「サマータイム・ブルース」という曲がある。不良っぽいイメージを裏切り、まっすぐな言葉で訴えていた。今を予見していたかのように▲自ら率いる売れっ子バンドで世に出そうとしたのはチェルノブイリ事故から2年後。逸話は今も語り草だ。なぜか発売目前で中止の憂き目に。レコード会社の親会社が原子炉メーカーのため不興を買ったと取り沙汰された▲「ロックは反体制」を自負した忌野さん。物議を醸すのは承知で歌わずにいられなかったのだろう。ついには別の会社からCDを出し、ファンに愛されてきた。歌が持つメッセージの力を感じる▲こちらの曲も騒動を起こした。ロシアの女性ロックバンドの3人が聖堂に乗り込み、「マリア様、プーチンを追い出して」と過激に演奏した。大統領の逆鱗に触れて懲役刑を言い渡されたが、世界中の話題になった点は本望だろうか▲今や忌野さんの曲は各地のデモのテーマソング代わり。長渕剛さんら気骨ある歌手も普通に脱原発を歌いだした。ロシアのバンドが大手を振って歌う日もいつか来ると思いたい。

(2012年8月20日朝刊掲載)

年別アーカイブ