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社説・コラム

ひと・とき 映画監督 大林宣彦さん

古里の戦争体験描く

 「3・11のとき、私の心のスクリーンも真っ白になり、何を描けばいいのか分からなくなった」。新潟県長岡市で市民の協力を得て制作した映画「この空の花―長岡花火物語」。舞台あいさつのため広島市を訪れた。

 1945年7月の模擬原子爆弾投下、市街地の8割を焼いた8月の長岡空襲…。古里の戦争の記憶をつむぎ、若い世代に「忘れないで」と語り掛ける。「長岡で体験した全てを放り込んだ。劇映画でもドキュメンタリーでもない。悲惨でつらく苦しい話だが、美しく夢のように描いた」

 映画では、地方紙の記者が戦争体験者を訪ね、死者の声に耳を傾ける。「映画は一つのジャーナリズム。ピカソの『ゲルニカ』のように、不思議で面白くてきれいな芸術のジャーナリズムは、風化せずに永遠に残るんです」。東京都世田谷区在住。(渡辺敬子)

(2012年8月22日朝刊掲載)

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