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社説・コラム

天風録 「コスモクリーナーD」

 西暦2200年のきょう、巨大な船が地球に帰ってきた。赤茶けた地表は青い海、白い雲を取り戻す。40年近く前のテレビアニメ「宇宙戦艦ヤマト」。感動的に幕を閉じた。映画にもなり、幅広い世代の胸に刻まれている▲宇宙のかなたイスカンダルへ。過酷な航海の末に持ち帰ったのがコスモクリーナーDという装置だ。放射能を除去できる。物語では、異星人から放射能攻撃を受けて滅亡寸前にある人類。はるかな星からの贈り物に救われる▲SFながら、荒唐無稽と言い切れないところが空寒い。なにせ異星人の侵略などなくとも、現実の世界には大量の核兵器が存在する。安全神話が崩れた原発も日本は再稼働させた。人類は自ら、危機的状況を深めていないか▲放射能が住む人を追い払った福島の被災地。その復興グランドデザインが決まった。避難指示を解除して2年で、わが家へと戻ってもらう。生活支援や経済再生に、復興庁は尽くすというが、それも大地がクリーンであってこそ▲汚染土壌を焼却、浄化する技術など、研究機関や大学は開発を急ぐ。とはいえ時間と天文学的な費用がかかりそう。住民の心情を思えば、夢の装置をどうか一刻も早く。

(2012年9月6日朝刊掲載)

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