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社説・コラム

社説 オスプレイ 結論ありきの検証では

 説得力に欠けると言わざるを得ない。初めから「配備ありき」の検証だったのではと、あらためて疑いたくなる。

 米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ。6月に米フロリダ州で起きた墜落事故に関し、森本敏防衛相は沖縄県の仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事らに、政府独自の検証結果を報告した。「副操縦士と機長による人的要因が大きい」という。

 4月にモロッコで墜落した事故と同様、「機体に不具合はない」とする米政府の調査結果を追認した格好だ。

 しかし、オスプレイの安全性を不安視する専門家は少なくない。政府がそうした声を踏まえ、独自の検証にどこまで反映させたのか疑問である。

 なぜなら、その後もヒヤリとする事態が続いているからだ。先週も米ノースカロライナ州の市街地に緊急着陸した。黒い煙が出ていたという証言もあるというから、何らかの機体トラブルを想起させる。岩国に一時駐機中のものと同型機である。

 この件について森本防衛相は「警告灯がついたので事故を防ぐため着陸したと米側から一報を受けた」と説明。「事故ではない」とした。

 米側が10月初旬とする沖縄・普天間基地への配備方針に、口を挟みたくないのだろう。米側の受け売りのような防衛相の説明は、日本政府の及び腰姿勢の象徴にも思えてくる。

 一方、玄葉光一郎外相は記者会見で「スケジュールありきではない」と述べ、運用が遅れる可能性も示唆した。当然だろう。政府は緊急着陸の原因も含め、徹底的に再検証すべきだ。

 森本防衛相との会談で仲井真知事は「機体に不具合はないが落ちるという話では、不安の払(ふっ)拭(しょく)どころか拡大だ」と述べた。

 確かに、人為ミスが続くということ自体が問題だ。操縦の難しさか、技術の乏しさか。再発防止策をどこに見いだせばいいのかも分からなくなる。

 野田政権は在日米軍の抑止力を向上させるというが、根拠は明白ではない。むしろ長距離飛行が可能なオスプレイは、中国や北朝鮮にほど近い沖縄より、グアムやサイパン、ハワイを拠点とした方が戦略的にもより生かされるとの見方もある。

 尖閣諸島をめぐる対立が深刻化する中、オスプレイの沖縄への配備を期待する声もあるが、それもどうだろう。

 周辺諸国とのあつれきを深刻化させないためには、何より建設的な対話を重ねていく外交努力が先ではないか。

 日米安保体制の下、米国に追従して「物言わぬ」政策を続けてきた日本政府の姿勢を見つめ直す時でもあろう。

 オスプレイ配備についても、政府は日米安保条約の事前協議の対象外とし、米国の方針を容認してきた。

 9日、沖縄県宜野湾市であった県民大会。10万人もの人々が「オスプレイNO」と赤いプラカードを掲げ、こぶしを突き上げた。

 それは負担を押しつけるばかりで県民の声に耳を傾けようとしない政府への怒りにほかならない。差別ともいえる構造に無関心な本土の国民に向けた叫びにも聞こえる。

 政府は強い反発を誠実に受け止め、計画の中止も視野に、米側と交渉を重ねてもらいたい。

(2012年9月12日朝刊掲載)

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