×

社説・コラム

社説 「日本維新の会」結党 まず政策を吟味したい

 「第三極」として、来る総選挙で一定の議席を獲得するのは間違いない。橋下徹大阪市長を代表とする「日本維新の会」が結党を宣言した。民主党、自民党、みんなの党を離れた衆参7議員の合流によって、国政政党としての要件も満たした。

 今月初めの共同通信の世論調査では6割が期待を寄せ、衆院比例代表の投票先でも自民に次いで2位。橋下氏が大勝負をかけた大阪の知事・市長ダブル選からまだ1年足らずというのに、驚くほどの勢いだ。

 民主党には失望したが、簡単に自民党政権に戻したくない。そう感じる有権者の受け皿ともなっているのだろう。日本政治の閉塞(へいそく)感の裏返しともいえる。

 だが国政政党として信を問うには、さまざまな課題が待ち受けているのは確かだろう。

 母体である「大阪維新の会」の地方選での躍進は、橋下氏の個人的な人気に支えられてきた感がある。「大阪都」構想への道を開いた行動力に、歯切れのいい弁舌。強引な手法に批判も強いが、政治離れが進む若い世代も引きつけてきた。

 今後はカリスマ性だけでは済むまい。国政の場では、求められるものが格段に違うはずだ。

 何より政策である。党綱領となる「維新八策」を見ると、どうしても不安がつきまとう。

 地域主権のために道州制を導入する―。最も重視するというテーマは、政治状況によって可能かもしれない。一方で衆院定数半減、中央省庁幹部の政治任用、消費税の地方税化と地方交付税廃止などは実現の道筋のないままのアイデアにとどまる。

 さらに首相公選制や参院廃止に至っては憲法改正も必要だ。簡単に前に進む話でもない。

 きのう橋下氏は集団的自衛権行使の容認をあっさり口にしたが、外交と安全保障政策はそもそも具体的な中身に乏しい。

 むろん従来の価値観にこだわらず、霞が関や国会の外から選挙を通じてムーブメントを起こす意気込みはうなずける。原子力ムラの論理に左右され、大惨事を引き起こした原発政策を見ても、戦後のさまざまなシステムが問い直されているからだ。

 しかし改革には政策力に加え、しっかりした体制が欠かせない。橋下氏は市長のまま党首として大阪から指揮を執るという。最大の持論の「大阪都」構想も後押しする法律ができたばかりである。道半ばの今、国政ばかりに力を注ぐようなら違和感を抱く住民もいよう。

 橋下氏は、こうした疑問にきちんとこたえてほしい。

 まず次の衆院任期中、どんな手順で何ができるのか実効性を伴う政策を示すべきだ。維新の会への投票は橋下流の政治手法への白紙委任ではないはずだ。

 3年前の総選挙で民主は財源や手法の裏付けのないままマニフェストを掲げ、多くを実現できずに政治不信を極めた。同じことを繰り返してはならない。

 候補者選びも問われる。橋下氏肝いりの維新政治塾メンバーのほか国会議員、地方議員らを対象に公募し、350人程度の擁立を目指すという。だが数を集めればいいものではない。橋下人気だけに頼らず、自分でしっかり政策を語れるような候補を発掘できるだろうか。

 有権者の側もムードに流されず、冷静に政策と人材を見極める姿勢が求められよう。

(2012年9月14日朝刊掲載)

年別アーカイブ