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社説・コラム

社説 ダブル党首選 3年間の検証 必要では

 世論調査の結果がそのまま「近いうち」の総選挙に反映されるとすれば、5人のうちの1人が次期首相の座に最も近づく。自民党総裁選が始まった。

 政権交代時のマニフェストが破綻し分裂まで起こした民主党も、代表選のさなかである。

 デフレと円高が続くなか、震災復興が進まないのに増税が先行する。経済と暮らしの先行きに不安が募る。

 尖閣諸島の国有化に反発する中国では反日デモが激化し、監視船が日本の領海を侵犯した。緊張が高まるばかりだ。

 文字通りの内憂外患に、二大政党の政策や方針が重みを増しているはずである。

 ところが、それぞれの党所属議員や党員、支持者は別として党首選への国民の関心はいまひとつのようだ。さめた空気が漂うのはなぜだろう。

 与野党として攻守所を変えた両党が、自らを十分検証していないからではないだろうか。

 野に下って3年。満を持した自民の総裁候補は全員が「世襲議員」だ。世代交代が一定に進んでいるとはいえ、新たな分野からの人材が発掘できない古い体質を表してもいよう。

 消費増税を柱とする民主、公明との3党合意にこぎつけたことは経済界などから高い評価を受けている。

 「4年間は増税しない」との方針を転換した民主とは対照的に政策の一貫性は認められる。

 しかし自民が増税に絡めて防災を名目に総額200兆円規模の公共事業を打ち出したのはどうか。相も変わらぬ「土建国家」づくりと疑われよう。

 一方で国民の切実な関心事である原発問題では、各候補からの明確なメッセージがまだ伝わってこない。

 これまで原発を推進してきた与党時代の反省を踏まえ、新たな政策を打ち出すときだ。それなのに模様眺めの態度を続けるのは、世論をうかがい経済界に配慮しているためではないか。

 尖閣諸島や竹島など領土問題にしても、民主党政権を弱腰や未熟と批判するだけでは不十分だ。中国や韓国との関係がこじれた原因の一つに、国境の画定をあいまいにした戦後処理のまずさがある。これも過去の負の遺産といえよう。

 野党体験を踏まえ、生まれ変わったと党の新しい姿を有権者にアピールできる総裁選びを進めてもらいたい。

 従来ならもっと注目されていた与党民主の代表選はどうか。小沢一郎元代表らの集団離党後も党内対立がくすぶり続ける。

 「次の総選挙での敗北が避けられないから、時期をできる限り遅らせたい」との議員心理が広がっている。これでは野田佳彦首相の再選が確実視されても、求心力は高まるまい。

 必要なのは与党体験の総括である。「コンクリートから人へ」や「脱官僚依存」が果たせなかった原因を徹底して掘り下げる論議を進めるべきだ。それが国民に理解されなければ、再び野党に戻ればいい。

 議会政治のモデルともてはやされていた二大政党制。第三極を目指す新党の活発な動きを前に、あり方が問われている。

 多様な民意を大筋でまとめつつ政策の対立軸を鮮明にして、有権者に選択を迫る。それが本来の政党政治ではないか。とりわけ民主、自民の責任は重い。

(2012年9月15日朝刊掲載)

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