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社説・コラム

『潮流』 3・11後の国策

■防長本社編集部長 番場真吾

 影響を与える地域にどう安心してもらうか―。国策を進める上で東日本大震災以降はなおさら、この視点が欠かせまい。国は情報開示の仕方を含め、もっと意を用いるべきではないか。

 先週、山口県に大きく影響する政府の動きが二つ重なった。岩国市議会へオスプレイの説明に入った同じ日、上関原発計画(上関町)が事実上中止になる方向の新しいエネルギー戦略も打ち出した。いずれも、不安を感じている地元に対する説明姿勢に物足りなさを感じざるを得ない。

 オスプレイは当初、「米国の運用の問題」とし、そもそも政府の責任で説明する気があったのか、という疑問もある。強い反対があった後は独自に事故原因を検証し、地元説明も重ねている。日米安保の案件としては丁寧な対応をしているつもりかもしれない。

 しかし3・11は、求められる情報の質を変えた。大津波の前に防波堤は役に立たず、起きないといわれた原発事故に今なお大勢の人が避難を余儀なくされている。災害は起きることを前提に、住民は逃げるルートなどの情報を事前に知っておくことが大切という知識を得ている。

 「人為ミス」が事故原因というだけでは納得できまい。再発防止策など、より詳しい情報開示がまず求められているのではないか。

 新しいエネルギー戦略は、国民にもっと説明が要るだろう。2030年代の原発ゼロ目標を明記する一方、建設中の島根原発3号機(松江市)を稼働させる話も出ている。原発はなくなるのに核燃料サイクルは維持する、といった矛盾が目立つ。

 何より、上関町では原発の賛否をめぐり30年にわたり、地域のつながりまで分断されてきた。現地にまだ説明がないのはあまりに無神経ではないか。3・11は国策と地域の関係にも見直しを迫っている。

(2012年9月18日朝刊掲載)

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