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社説・コラム

社説 民主代表に野田氏再選 この物足りなさは何だ

 政権与党の党首選にしては盛り上がりに欠けたと言わざるを得ない。

 民主党代表選できのう、現代表の野田佳彦首相が他の3候補に大差をつけ、再選された。引き続き国政のかじ取りを担う。

 とはいえ、この物足りなさは何だろう。時期が重なった自民党総裁選と比べると、明らかに影は薄かった。

 今回の代表選は、政権交代後の3年間を総括する機会だったはずだ。度重なる公約違反で地に落ちた有権者の信頼をどう取り戻すのか。残念ながら、その道筋が見えたとはいえない。

 他の候補は野田首相の党運営を批判したが、支持を集められなかった。これも、党をいかに立て直すのかを明確にできなかったからではないか。

 消費税の増税をめぐり小沢一郎元代表らが大量離党した後も、党を離れる議員が絶えない。衆院で与党が過半数を割れば、内閣不信任案が成立する可能性もある。代表選で圧勝したとはいえ、首相が求心力を回復するのは難しかろう。

 その消費増税については代表選でも議論は深まらなかった。他の候補は「増税先行は問題」「原点に返って手続きを踏むべきだ」と指摘したが、野田首相は「決められる政治」を掲げてかわした。

 政策論議が低調な中、エネルギー政策では全候補が「原発ゼロ」を目指す方針を示した。こちらこそ野田首相にはしっかり決めてもらいたい。

 民主党が代表選期間中に開いた街頭演説で、野田首相に聴衆から「帰れ」などと厳しいやじが飛んだ。「うそつき」とのプラカードも見られたという。

 そこで首相は「財政を悪化させ、原発を推進したのは、どの政権か」と自民、公明両党を厳しく批判した。

 その主張には一理はあろう。しかし、消費増税で両党と合意したのは首相自身ではないか。いまさらそんな批判を口にしても、有権者にはぶれているとしか思えない。

 5候補が競う自民党総裁選。政権奪還を狙うだけに、それなりに盛り上がっている。一方で新党「日本維新の会」など「第三極」が勢いを増す。

 どちらも、政権与党に対する国民の不満と不信の裏返しにほかならない。野田首相も分かっているはずだ。

 なのに再選されると早速、内閣を改造する意向を示したのはどうだろう。改造は6月にしたばかり。喫緊の課題が山積する中、自殺した松下忠洋金融担当相を除けば、閣僚を入れ替える必要があるのか。党内での求心力を高めるのが狙いならば、大いに疑問である。

 代表選の投票直前の演説で野田首相は「民主党らしい改革を進めたい。子ども、働く人、地方を元気にする」と訴えた。だが有権者が最も聞きたいのは、空回りするばかりの理念ではない。どうやって実現するかの具体策だ。

 首相は「近いうち」とした解散時期の先延ばしも示唆する。だが臨時国会では、国民生活に直結する特例公債発行法案を成立させ、速やかに衆院を解散すべきである。

 いたずらに延命を図るのは、もはや許されまい。今度こそ実現可能な政策をまとめ、総選挙で信を問うべきだ。

(2012年9月22日朝刊掲載)

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