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社説・コラム

社説 内閣改造 いばらの道 変わらない

 何のための内閣改造なのか、首をひねる国民も多かろう。

 きのう野田佳彦首相は閣僚18人のうち10人を入れ替える大幅な改造人事を断行した。ことしになって早くも3回目である。

 解散風が吹く中、政権の手詰まり感を少しでも打破したい。首相にはそんな思いもあろう。だが国内外の課題が山積する中で、内閣を刷新することにはデメリットもあるはずだ。

 安倍晋三新総裁のもとで体制を固めつつある自民党からは、衆院解散を求める圧力が再び強まっている。公債発行特例法案などの懸案が前に進む見通しもない。野田政権の行方は依然、いばらの道といえよう。

 さすがに国民の冷ややかな視線を感じたのだろう。閣僚名簿の発表は官房長官任せにせず、首相自ら行った。しかも新任閣僚の登用理由を一人一人述べる念の入れようだった。

 だが「政府・与党の連携を深め、内閣の機能を強化する」とした改造の目的は額面通りに受け取れない。政策よりも目先の政局にきゅうきゅうとする首相の姿も透けて見えるからだ。

 その象徴が田中真紀子文部科学相だろう。首相は起用の理由に「発信力」を挙げた。確かに歯に衣(きぬ)を着せない弁舌で国民の知名度は高い。来る総選挙で「顔」としての役割を期待しているのは間違いあるまい。

 一方で、いじめ対策などが問われる文部行政を指揮する手腕はどうなのだろう。かつて小泉政権下では外相に抜てきされたものの、部下とのトラブルなどで更迭された。今回も言動の危うさを心配する声がある。

 露骨な論功行賞も気掛かりだ。城島光力財務相や樽床伸二総務相といった野党対策で汗をかいた民主党執行部のほか、代表選で首相を支持した中堅・ベテラン議員を入閣させた。田中文科相もその一人といえる。

 野党側の「入閣待望組の在庫一掃」という批判も、あながち的はずれではなかろう。派閥の順送りや論功でポストをたらい回しした自民政権時代の古き政治を見ているかのようだ。

 そもそも予算編成のさなか、大臣の半分が一から勉強するような余裕が今の政権にあるとは到底思えない。結果として、官僚に政策を丸投げする傾向が強まりはしないか。

 むろん首相も「継続性」を忘れたわけではないようだ。退任との見方もあった枝野幸男経済産業相や平野達男復興相は留任させた。エネルギー政策や震災対応で腰が据わっていないとの批判を避けるためだろう。

 一方で日朝の政府間協議が再開されたばかりなのに、拉致問題担当相がまた交代した。民主政権で7人目。家族会などの不信感は募るに違いない。

 過去の自民政権の例を見ても、低迷する内閣や党の支持率を改造によって挽回できたケースは数少ない。首相の政局観は甘すぎるのではないか。

 改造内閣の正念場は臨時国会だ。公債発行特例法案や「1票の格差」是正などに加え、景況感の悪化を踏まえた補正予算も視野に入れているようだ。しかし野党に解散を迫られるのを恐れ、召集の先送り論も与党内にあるというからあきれる。

 民主、自民、公明3党の党首会談が近く行われる。首相が解散を確約した上で懸案解決への協力を求めるのが筋だろう。

(2012年10月2日朝刊掲載)

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