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社説・コラム

天風録 「ビートルズ半世紀」

 50年前のきのう、英国に風変わりな「キノコ」が現れた。といっても秋の味覚ではない。マッシュルームに似た髪形の4人組。柔らかなハーモニカで始まる曲「ラブ・ミー・ドゥ」を引っ提げ、ザ・ビートルズがデビューした▲人気は七つの海を渡る。世界の都市を征服するさまを「現代のナポレオン」と評したのは作家の大仏次郎だ。来日コンサートの見物記を新聞に寄せている。少女たちの黄色い声にあきれ返り「演奏も歌も溺死させてしまう」▲やがてアイドルやファッションリーダーには飽きたらしい。社会を音楽で突いていく。冷戦、ベトナム戦争…。混迷の時代に平和の「レボリューション(革命)」を訴えかけた。日本でも若者の心の奥底に響いたに違いない▲誕生から半世紀。とうに解散し、2人は亡くなった。それでもメッセージはなお響く。「愛こそはすべて」という曲もそう。震災の被災地を支援するチャリティーソングとして、坂本龍一さんらが演奏している▲原発政策に抗議するデモや集会。日本の行方に疑問を感じた人々が行動を始めている。団塊のビートルズ世代から若者まで。社会変革や平和を願う心に、4人の歌は寄り添っている。

(2012年10月6日朝刊掲載)

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