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2025年に核1000発以下 ICNND報告書 最終草案

 核廃絶への道筋を探る、核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)が、17日からの広島会合を前に作成した報告書最終草案の全容が16日、明らかになった。全世界に現在2万発以上ある核兵器を2025年までに千発以下とする野心的な目標を設定。同委員会は、年明けに正式な報告書を発表し「核なき世界」実現への工程表を提示、来年5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の成功を後押ししたい考えだ。

 これまでの報告書案は、米国に核の「唯一の目的」を核戦争阻止に限定する新戦略を来春までに採るよう促したが、最終案はこの期限を12年に先送り。核の「先制不使用」政策採用も10年から25年に変更された。

 核廃絶の前段階として、核の政治的・軍事的役割の低下を図る具体的措置は後退したことになり、背景には「核の傘」弱体化を懸念する日本の抵抗があった。「核千発の世界」実現を疑問視する声もあり、20日までの会合の行方が注目される。

 報告書「核の脅威根絶」の最終草案は、12年までに達成する「短期的行動課題」として(1)米ロ両国の核削減(2)包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効(3)核保有国が非核保有国を核攻撃しないとした「消極的安全保障」付与(4)多国間核軍縮交渉への土壌づくり―など核廃絶に向けた具体的なステップを明示。さらに、核保有国に「核保有の唯一の目的は自国と同盟国への核使用の抑止にある」と宣言するよう求めた。6月の前回会合時の草案は、NPT再検討会議までに米国に率先して宣言するよう促していた。

 核廃絶の前段となる「最小化地点」に至る「中期的行動課題(2025年まで)」としては、全世界の核兵器数を千発以下にすると明記。先制不使用に根差した核戦略を策定するよう核保有国に呼び掛け、核の開発・保有・使用を禁じた核兵器禁止条約の選択肢にも触れた。6月段階では、来年5月までに先制不使用の検討を表明するよう米国に求めていた。

 核ゼロに至る「長期的行動課題」には(1)核抑止力保持を正当化しない軍事的条件の整備(2)違反国を罰する国際的な法体制の整備―などを盛り込んだ。

 委員会関係者によると、川口順子共同議長ら日本側の異論表明が先制不使用などに関する議論後退を招いた。

(共同通信配信、2009年10月17日朝刊掲載)

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