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社説・コラム

天風録 「アイム・マララ」

 世界中に憤りが渦巻いている。パキスタンに住む15歳の少女マララ・ユスフザイさんが、通学の車内でイスラム武装勢力の凶弾を浴びた。銃弾が頭を貫き、一時は意識不明に。国連事務総長も怒りの声を上げた▲女性であるがゆえの差別を受けずに学びたい―。そう願い、妨害に屈せず訴えてきた。武装勢力の目につく、おしゃれな服は着るなと言われた、とブログでも発言。そんな批判がテロ集団の逆鱗(げきりん)に触れた▲事件後、ネット上に「アイム・マララ(私はマララ)」という言葉が飛び交っている。もう、暴力や抑圧には沈黙しない。少女の勇気に突き動かされた一人一人の決意がにじむようだ▲逆らう者を力でねじ伏せ、周囲を恐怖に陥れる。異国の出来事とは限らない。北九州市では暴力団の立ち入りを拒む飲食店の人たちが襲われ、放火されている。世論の怒りを束ねて対抗するしかない▲英国に運ばれ、死のふちからは脱したというマララさん。目標とする人は、隣国アフガニスタンの女性人権活動家マラライ・ジョヤさんだとか。広島市内で1年前、女性が虐げられている母国の実態を告発した人だ。少女もいつか回復し、この地で語ってほしい。

(2012年10月24日朝刊掲載)

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