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社説・コラム

核軍縮 信頼醸成が鍵 佐々江・新駐米大使に聞く

 外務事務次官から駐米大使に起用され、今月中旬に赴任する佐々江賢一郎氏(61)=倉敷市出身=に、米国の核政策や在日米軍を中心にした日米関係の課題を聞いた。(岡田浩平)

オスプレイ 違反なら是正

  ―オバマ大統領の核政策の評価は。
 「核のない世界」を目指すと表明し、世界の軍縮の流れを進める理念的な意味での大きなリーダーシップを発揮された。現実の大きな一歩は米国とロシアの核兵器削減だ。ただ、ミサイル防衛の問題などでやや足踏み状態にある。さらなる削減に向け、機運を盛り上げることが大事だ。

 ―米国の核軍縮を後押しする手だては。
 日本などが主導する「軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)」で核兵器保有国に対し、軍縮への具体的な要望を伝えている。互いに信頼を醸成しながら軍縮のステップを踏むよう、いろいろな場で働き掛けることが単純なようで王道だ。日本の場合は体験からくる魂の叫び、力強さがある。

 ただ、急速な変化は安全保障を害する場合もある。広島の皆さんにいろいろな気持ちはあろうが、安全保障上、米国の核抑止に依存せざるを得ないのも現実だ。それもみながら、世界全体の核兵器依存を減らすことが重要だ。

  ―核兵器の非合法化を目指す声明に日本が賛成しませんでした。
 現実に何が最も適切な方法かを考えると、必ずしも賛成できなかったのだろう。アジア太平洋全体で言えば、軍備拡張の傾向にあり中国は特に著しい。

  ―オバマ大統領の広島訪問を求めますか。
 訪問機会があれば非常に望ましい。政策課題として、ある。

  ―在日米軍に関し、中国地方では米軍機の低空飛行訓練が問題です。
 騒音被害が起きないよう協力を求める必要はある。耐えられない状況かどうかは個別に判断すべきだ。

 ―垂直離着陸輸送機MV22オスプレイも飛行ルールを破っているのでは。
 日米間で協議、調整し、相当の安全対策をとった。合意事項に反しているのではという話は、一つ一つ確認している。違反していれば是正するのが当然だ。

  ―米兵の事件で日米地位協定の改善を求める声も強いです。
 どうすれば再発を防げるかという観点で考えるべきだ。地位協定の改正に踏み込む判断はしていないが、いろいろな声があることは認識している。

  ―沖縄県宜野湾市の普天間飛行場の移設問題で揺れた日米関係の立て直しの鍵は。
 大きな流れで言えば、日米関係の基本は依然として健全でしっかりしている。(日米合意に基づき)普天間は固定化せず、辺野古(同名護市)に持っていく。その間に、米軍再編を進め、沖縄の負担を軽減する。一つ一つステップを進めることが重要だ。大きな方向で一致しつつ、感情的にならずに静かに懸案を解決、処理したい。

ささえ・けんいちろう
 広島大付属高、東京大を卒業後、74年に外務省入り。アジア大洋州局長などを経て10年8月から外務事務次官を務めた。

(2012年11月4日朝刊掲載)

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