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社説・コラム

『記者縦横』 情報公開 国の認識疑問

■岩国総局 酒井亨

 「情報公開に努めていきたい」。地元に伝えた言葉の重みを国がどこまで認識しているのか疑問に感じている。米海兵隊岩国基地(岩国市)に陸揚げされ、10月初めに普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備された垂直離着陸輸送機MV22オスプレイをめぐる防衛省幹部の発言である。

 10月19日、オスプレイ2機が普天間配備後、初めて岩国基地に飛来した。その2時間半前、防衛省は岩国市に「飛来の可能性がある」と伝えたが、市には詳細な連絡はなかったという。

 防衛省は「謝意(おわび)を伝える」とし前日の18日、長島昭久防衛副大臣が岩国市を訪ね、福田良彦市長に先行搬入や地元での試験飛行に「市民に不安を与えた」などと陳謝したばかりだった。

 オスプレイについては「地元の実情や市民感情を考えると、岩国基地での飛行は認められない」とのスタンスに立つ福田市長だが、基地政策では「信頼関係が重要」と国との協調、協力路線を重視。その市への翌日の情報提供の薄さには驚く。長島副大臣が陳謝後に述べた「引き続き理解と協力をお願いしたい」の言葉にも違和感を覚えた。岩国での試験飛行でも国は市の照会に「(飛行)ルートの詳細は承知していない」と答えた。

 米軍は今後、岩国などに2~6機を月2、3日派遣し低空飛行訓練などを行うという。岩国飛来に長島副大臣は「具体的な運用計画は確定していない」と述べた。「情報公開に努めていきたい」はその直後に発した言葉だった。

(2012年11月5日朝刊掲載)

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