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社説・コラム

平和拠点 問われる具体化 広島県構想 知事が欧州で支援要請

■記者 野崎建一郎

 広島県の湯崎英彦知事が欧州訪問を終えて4日に帰国した。国連欧州本部や各国際機関の幹部に、国際平和拠点ひろしま構想をPR。来年の広島開催を目指す核軍縮に向けた多国間の円卓会議などへの協力を要請し、人脈づくりで種をまいた。平和拠点構想を本格的に具体化する来年に向け、広島市との協力や役割分担も含め、実行力が問われる。

 「とても重要な構想だ。広報面などでサポートしたい」。1日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部のトップであるカシムジョマルト・トカエフ事務局長は、湯崎知事の平和拠点構想を評価し、協力する考えを表明した。

 湯崎知事は10月28日から8日間、ジュネーブと英国のロンドン、オーストリアのウィーンの3市で13の国際機関やシンクタンクを巡った。会談した幹部たちは、平和拠点構想への支援を約束した。

 湯崎知事が3年前の知事選で訴え、昨年10月にまとまった平和拠点構想。被爆地の役割として、核軍縮のための円卓会議開催や平和構築の人材育成などを盛り込む。翌11月には米ニューヨークの国連本部で潘基文(バンキムン)事務総長に説明し、協力するとの回答を得た。今回は、米国と並ぶ「重要地域」と位置付ける欧州での足場づくりをにらんで訪問した。

 「ネットワークを築くための第一歩。各機関の関心は高く反応は良かった」。湯崎知事は手応えを強調する。

 ただ、構想を実現するための具体策は多くがこれからだ。来年の開催を目指す円卓会議も参加国やメンバーなどの人選、日程とも定まっていない。ウィーンで会談した国際原子力機関(IAEA)のダウド・モハマド事務次長は協力姿勢を示しながら「構想はいわば理念を集めたもの。実行が重要だ」とも指摘した。

 広島市との協力関係をどう築くかも課題。これまでは、県が平和構築の人材育成などの国際貢献に取り組み、広島市長が国際社会へ被爆地の願いを訴えるなど、一定のすみ分けをしてきた。平和拠点構想を掲げる湯崎知事に対し「被爆地の声をアピールするのは市長の仕事」(ベテラン県議)との声もある。

 1日に国連欧州本部であった記者会見では、広島市との役割分担を尋ねる質問も出た。湯崎知事は「オール広島で取り組むべきだ」と説明する。

 来年は円卓会議や、世界に音楽で平和を訴える「ワールドピースコンサート」などが計画される。平和拠点構想をより見える形で示し、県民を巻き込んで展開していく取り組みが求められる。

国際平和拠点ひろしま構想
 国内外の有識者の提言を踏まえ広島県が2011年にまとめた。被爆地の役割として、核兵器廃絶への貢献や核軍縮の研究集積・人材育成を柱に据える。核兵器保有国などを対象に核軍縮や不拡散への取り組みを格付けする成績表の作成や、多国間で核軍縮を話し合う円卓会議の開催、平和構築に取り組む人材育成などを掲げる。県は具体的な行動計画を順次、とりまとめていく方針だ。

(2012年11月6日朝刊掲載)

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