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原爆症訴訟 基金創設 国が確認 敗訴者救済 宙に浮く

■記者 岡田浩平

議員立法白紙に 厚労省動き鈍く

 原爆症認定集団訴訟で、敗訴者救済のための国の基金づくりが政権交代の余波で宙に浮いている。原告と政府側の訴訟終結のための確認書では議員立法に委ねる形での設置を明記。ところが民主党は内閣に法案提出を一元化する方針で、多くの懸案を抱える厚生労働省の動きも鈍い。

 8月6日に広島市で麻生太郎首相と日本被団協の坪井直代表委員たちが交わした確認書は、一審判決で勝訴した原告は判決を確定し国が原爆症と認定。敗訴者は議員立法で基金を設け事実上の解決金を支払う内容だ。当時、鳩山由紀夫民主党代表も協力する意向を表明した。

 9月16日の政権発足後、民主党は政策決定の一元化方針に基づき「政治資金など政治的な内容以外は政府が責任を持って法案を出す」との趣旨を所属議員に通達した。

 党被爆者問題議員懇談会の高木義明会長(長崎1区)は「確認書は丁寧に扱う。基本は政府対応だ」と明言。松本大輔事務局長(広島2区)は「基金の規模や支給対象はどういう想定だったのかを確認し、内閣での法案提出を含めて検討し直すことになる」と説明する。

 ただ厚労省は、新型インフルエンザ対策や子ども手当など目玉政策の対応に追われている。10月になってようやく長浜博行副大臣が高木、松本両氏から経緯や課題を聞いたばかりだ。

 一方の自民党。麻生内閣で解決への道筋を付けた河村建夫前官房長官(山口3区)が、舛添要一前厚労相らとともに立法へ意欲は示す。しかし「超党派の法案にはどう対応するつもりなのか」と民主党の出方をうかがっているのが現状だ。

 11月30日には福岡高裁、横浜地裁で判決が出る。日本被団協の田中熙巳(てるみ)事務局長は「訴訟の全面解決へ基金の内容を早く示してほしい」と各政党への働き掛けを強める構えだ。

(2009年10月20日朝刊掲載)

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