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社説・コラム

社説 敦賀原発 廃炉の道筋を議論せよ

 日本の原発政策を考える上で極めて重い意味があろう。日本原子力発電(原電)が運営する福井県の敦賀原発をめぐって、原子力規制委員会が思い切った判断を下した。

 2号機直下の「破砕帯」と呼ばれる断層についてである。現地調査した専門家5人で一致した見解は「活断層である可能性が高い」というものだ。

 国の指針では、活断層の上に原子炉の設置は認められない。規制委の田中俊一委員長が「再稼働の安全審査はとてもできない」と述べたのも当然だ。老朽化が進む1号機を含め、再稼働どころか廃炉は避けられまい。

 この際、具体的な廃炉の道筋を議論していくべきだろう。

 それにしても大地震につながる活断層の上に原発が堂々と立っているとすれば空恐ろしい。しかも福島第1原発の事故を受け、全原発を総点検していなければそのまま放置されていた。

 こうした事態が、なぜ生じたのか。何よりの理由は、原電側のずさんで甘すぎる調査にあることは間違いない。

 敦賀では稼働中で最古の商業炉である1号機に続き、1987年に2号機が運転開始した。その建設当時にも、今回問題となった破砕帯や敷地内の別の活断層を認識していたという。

 なのに「問題なし」と片付けたのはどう考えても理解しがたい。外部の専門家の指摘で、敷地内に活断層があると正式に認めたのはわずか4年前だ。稼働ありきでリスクを過小評価してきた、との批判は免れまい。

 同時に原電の言い分をうのみにし、チェックを怠ってきた国の責任も当然重い。「原子力ムラ」のなれあいの構図がここでも透けて見えよう。

 原電はここに至っても規制委の判断にあらがう構えのようだ。活断層と認めれば廃炉に追い込まれ、会社としての経営も危ぶまれる。地元の雇用や敦賀市の財政などへの影響を指摘する声もある。だが、それらが安全をおろそかにする理由となるはずもない。

 震災後の電力需給を見る限り、実際は敦賀原発がなくてもやっていける状況にあろう。その意味でも計画中の敦賀3、4号機はもう必要とはいえまい。

 もし敦賀が廃炉となれば、安全確保を根拠に原発をなくすモデルケースとなるはずだ。その割に具体的なルールや手順が整っていないのは気になる。

 国や規制委は原発を稼働させるかどうかは指図できる。だが廃炉の判断はあくまで会社側に委ねられる。場合によって政府の責任で命じるような仕組みはできないか。巨額の廃炉費用を官民でどう負担するかも避けて通れない問題となろう。

 規制委による活断層リスクの調査は当面、新たに四つの原発でも続く。特に北陸電力志賀原発(石川県)の直下でも活断層の存在がかねて疑われる。同様に厳しい目を向けてほしい。

 稼働中の関西電力大飯原発(福井県)で確認されたものは活断層かどうか「グレー」のままだ。運転を停止して本格調査に踏み切ることも求められる。

 さらには調査対象を全国の原発に広げるべきだ。活断層の巣といえる日本列島に、なぜこれほど多くの原発が立地できたのか。過去の安全審査にまでさかのぼり、不備がなかったかも徹底的に検証する必要がある。

(2012年12月12日朝刊掲載)

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