×

社説・コラム

北朝鮮 ミサイル発射 識者に聞く 金栄鎬教授/福原裕二准教授

 北朝鮮が長距離弾道ミサイルを発射した12日、朝鮮半島情勢に詳しい中国地方の識者2人に、発射の意図や核実験を実施する可能性などを聞いた。 (田中美千子)

広島市立大の金栄鎬(キムヨンホ)教授(51)=政治学

核実験すぐにしない

 ことしは故金日成(キムイルソン)主席の生誕100年。金正恩(キムジョンウン)第1書記は宣言通り、年内にミサイル発射を成功させる必要があった。国外に力を示すだけでなく、国民の求心力を高めるためだ。4月に失敗し、焦っていたのだろう。

 断言はできないが、すぐ核実験をするとは思えない。オバマ米大統領は再選されたばかり、韓国は大統領選の真っ最中。両国の出方を見極めるまで核実験という「持ち駒」は温存するのではないか。

 日本の対北朝鮮外交も見直した方がいい。対話より圧力に傾きすぎだ。制裁強化は緊張を高めるばかり。経済支援という外交上のカードを使う道もある。

島根県立大の福原裕二准教授(41)=国際関係史

軍の不満抑える狙い

 北朝鮮は自国の安全保障に危機感を抱いている。ロシアや中国は以前のように後ろ盾になってはくれない。国際的に影響力を持とうとミサイル開発を続けるわけだ。

 今回のミサイル発射は国内事情も大きい。金正恩第1書記の新体制では、経済運営の主導権を軍から内閣に移すなどした。軍の不満を抑える狙いもあるだろう。

 日本は、北朝鮮を国際社会に軟着陸させる役割を負うべきだ。核兵器廃絶を求める被爆地の発信にはアピール力がある。北朝鮮が軍事増強を誇示する背景を踏まえ、批判するだけでなく、北東アジアの非核化に向けた提案をしてほしい。

(2012年12月13日朝刊掲載)

年別アーカイブ