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社説・コラム

社説 北朝鮮ミサイル発射 秩序乱す挑発許すまい

 北朝鮮が事実上の長距離弾道ミサイルを発射した。近隣諸国が強く中止を求めていたにもかかわらず、強行した。国際秩序を揺るがす暴挙だ。断じて許すわけにはいかない。

 北朝鮮は「人工衛星」の打ち上げと称する。しかし、弾道ミサイル技術を使ったいかなる発射も行わないよう求めた国連安全保障理事会決議に違反するのは明らかだ。安保理は緊急会合を開き、制裁強化など今後の対応について協議するという。

 軍事的な緊張をあおって経済支援などの譲歩を引き出すという駆け引きなら、国際社会には通用しない。孤立を深め、国民を路頭に迷わせるだけであることを北朝鮮は認識すべきだ。

 ミサイルはフィリピン東沖などに落下し、北朝鮮が予告した飛行経路と一致している。この「成功」がもたらす脅威を私たちはあらためて認識し、共有する必要があるだろう。

 打ち上げたのは「テポドン2」改良型とみられ、射程は約6千キロと推定される。東アジアだけでなく、米本土の間近まで到達する技術を北朝鮮が獲得したということだ。

 核弾頭を積めば、世界中を核の恐怖にさらすことになる。核武装国として、対米交渉を有利に進めたい狙いがあるのだろう。今回の「成功」で、米本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発にさらに力が入るのではないか。

 北朝鮮は2006年、09年の発射の際も、続けて核実験に踏み切った。韓国政府からは3回目の核実験の準備が進んでいるとの情報が伝わる。これをいかに阻止するかが、安保理の最重要課題といえよう。

 打ち上げを強行した背景には、若き最高権力者、金正恩(キムジョンウン)第1書記の焦りが垣間見える。

 2月の米朝合意で食糧支援を取り付けたが、4月の発射で中止となった。国内の食糧難は深刻化し、軍や住民の不満も高まっているようだ。

 発射は17日で一周忌を迎える金正日(キムジョンイル)総書記の「遺訓」でもある。金日成(キムイルソン)主席の生誕100年に当たることしのうちに体制強化を図りたかったとみられる。

 これ以上、挑発をエスカレートさせてはならない。国際社会が足並みをそろえ、対話のチャンネルを切らさぬよう働きかけていくしかないだろう。

 日本政府は金融制裁強化など厳しい安保理決議を求める方針だ。場合によっては、独自の追加制裁も検討するという。

 だが過去のミサイル発射や核実験の際も、日本は経済制裁を強めてきた。その効力には限界があり、実際に圧力を強化しても解決にはつながっていない。

 一方で森本敏防衛相は、ミサイル防衛のシステムを強化する必要があるとの認識を示した。外交で問題解決を図る姿勢も忘れてはなるまい。

 鍵を握るのは、北朝鮮と友好関係にある中国の対応だろう。発足間もない習近平体制の外交手腕が試される。安保理の常任理事国としても、毅然(きぜん)とした態度で猛省を促すべきだ。

 日本は6カ国協議を仕切り直す努力が求められよう。ロシアも「国際社会の意見を無視する行為」と北朝鮮を非難した。6カ国の枠組みを生かすためにも中国や韓国との関係修復が不可欠だ。東アジア全体の外交戦略を練り直すときでもある。

(2012年12月13日朝刊掲載)

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