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社説・コラム

社説 自公党首会談 「連立」の意義問われる

 合わせて衆院の3分の2を超える力をどう使うのだろう。自民党の安倍晋三総裁と公明党の山口那津男代表が会談し、連立政権の発足を確認した。首相指名までに合意文書を交わす。

 友党となって13年。選挙において切っても切れない関係にある。自公の枠組み維持は当然、織り込み済みの話である。

 だが選挙では、憲法改正などをめぐる安倍総裁のタカ派的姿勢に山口代表が苦言を呈した経緯がある。すきま風が吹き始めた印象は拭えない。

 事前にきちんと政策をすりあわせ、一致を図るのが連立の基本のはずだ。3年ぶりの自公政権復活にあたり、その意味を十分に認識してもらいたい。

 きのうの党首会談は30分ほど。まず連立することや大型補正予算を含む景気対策とりまとめなどで一致したが、政策協議の多くは宿題とした格好だ。

 公明の立場は微妙だろう。衆院再可決といった事態となれば31議席の力は欠かせないが、自民のあまりの勝ち方で発言力が低下する可能性がある。

 むろん自公の政策には共通点は多い。防災などの公共事業を拡大し、景気回復につなげる手法もその一つである。公明が強く訴える消費増税時の「軽減税率」も自民は前向きな姿勢だ。

 ただ根っこにある相違点を、どこまで克服できるだろうか。

 何より憲法観である。公明は9条の堅持を掲げる点でもともと自民のスタンスと相反する。山口代表は党首会談に先立つ会見で「優先度の高いテーマではない」と、改憲に積極的な安倍総裁をけん制した。自民が掲げる自衛隊の「国防軍」化や集団的自衛権の行使にも慎重だ。

 安倍総裁が選挙戦の途中から慎重な発言に転じたのも、友党の不安への配慮からだろう。ただ違いをあいまいにしたまま連立を組めば、自民の対応次第で政権は揺るぎかねない。

 原発政策の温度差も見過ごせない。公明が「原発ゼロを目指す」と公約したのに対し、自民はあいまいだ。民主党や日本未来の党など脱原発を掲げる勢力が大敗した中で、政権入りする公明の姿勢が問われてくる。

 早くも「自民に勝たせすぎた」との声が聞かれる。共同通信の世論調査でも自民大勝を「よかった」と答えたのは33%にとどまる。数を頼みにした強引な政権運営の歯止め―。公明に求められる役目は明らかだ。

 参院では2党合わせても、過半数には届かない。少なくとも来夏の参院選までは「ねじれ」が続く。安倍総裁は各党と法案ごとに協議し、協力を求める「部分連合」を唱えている。

 「野党」となる勢力の見識も試されよう。ただ自民へのスタンスははっきりしない。

 例えば日本維新の会である。橋下徹代表代行は、いったん首相指名で安倍総裁に投票する意向を口にしたものの、党内の反発であっさり撤回した。

 一方、みんなの党の渡辺喜美代表はかつて安倍内閣で閣僚を務めたこともあってか、協力をにじませる。さらには惨敗した民主も参院では第1党。消費増税の「3党合意」をてこに連携を望む議員もいるようだ。

 いずれの党も選挙戦で自民の政策を批判したはずである。長いものにまかれろ、との姿勢なら国民の不信を招く。あくまで政策で是々非々を貫くべきだ。

(2012年12月19日朝刊掲載)

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