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社説・コラム

社説 韓国大統領に朴氏 近隣関係 改善の契機に

 韓国の新大統領に与党セヌリ党の朴槿恵(パククンヘ)氏が決まった。韓国初の女性大統領が誕生する。

 半世紀近く前、日韓基本条約締結当時の大統領、故朴正熙(パクチョンヒ)氏の長女である。最近きしみを見せている両国関係だが、経済や安全保障の分野で、固いパートナーシップを取り戻すことが期待される。

 韓国社会を二分し、投票率75%を超えた選挙戦。朴氏は僅差で勝利した。それだけに国内世論への配慮が欠かせず、難しい政権運営を迫られそうだ。

 拡大した格差の是正とともに、選挙戦で争点となったのが、対北朝鮮政策である。

 北朝鮮は先週、大統領選に合わせたかのように、事実上の長距離弾道ミサイルを発射した。

 李明博(イミョンバク)政権下、悪化した南北関係。朴氏は対話を再開し、経済協力の条件として北朝鮮に核問題について進展を求める方針だ。朝鮮半島非核化へ日本や米国と緊密な連携が不可欠だろう。

 しかし、その日韓関係がぎくしゃくしている。島根県の竹島をめぐる対立は、李大統領が上陸したことで悪化した。また歴史認識における溝も深い。

 大統領選では対日関係はほとんど争点にならなかったが、竹島や歴史認識の問題では両候補とも強硬姿勢を示した。国内世論にも根強いものがあり、朴氏就任後も軟化は期待できまい。

 きのうの会見でも、「正しい歴史認識を土台」に和解、協力と平和が拡大するよう努めると述べた。

 これに対し、衆院選に勝ち、次期首相となる自民党の安倍晋三総裁の対応が注目される。

 安倍氏は早速、朴氏に祝意を示し、「緊密に意思疎通し、大局的な観点で関係を深化させたい」とコメントを出した。

 一方で安倍氏はこれまで、いわゆる従軍慰安婦問題について旧日本軍の関与を認めた「河野談話」を見直す可能性に言及していた。

 双方とも、相手を硬化させる刺激的な言動は慎みたい。まずは話し合いを持つべきだ。

 大統領就任式は来年2月25日。慣例として日本の首相も出席し、トップ会談をしてきた。

 ところが就任式3日前の「竹島の日」について、自民党は政府主催で式典を開くと公約。その通り実施すれば、韓国訪問も会談も実現するまい。

 竹島は日本の領土である。日本は国際司法裁判所での解決を求めている。朴氏には前向きな対応を望みたい。

 だが、会談前から感情的なもつれを生じさせては解決の糸口さえつかめまい。式典の強行がどんな影響を及ぼすか、考慮する必要があろう。

 まずは相互理解を進めたい。そこから解決策や妥協点を探っていくことが現実的だろう。

 北東アジアでは、日本や中国でも新政権が始動する。国連の潘基文(バンキムン)事務総長は各国の新たなリーダーに対し、「相互理解と尊敬の精神を持って地域の平和と安定に協力を」と求めた。

 日中韓は先月、自由貿易協定(FTA)締結への交渉入りで合意した。尖閣諸島や竹島をめぐる対立と切り離し、経済面の関係強化を優先する判断だ。

 新体制のもと、東アジア地域の緊張を緩和し、世界の経済をリードする新たな関係を築く契機にしたい。

(2012年12月21日朝刊掲載)

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