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社説・コラム

社説 世界この一年 きしみ噴出 解消の道を

 国家や地域間のきしみが目立ってきた。経済のグローバル化によって、先進国、新興国、途上国それぞれが「国益」という欲望を膨張させ続けている。

 領土や資源をめぐる緊張、根深い宗教対立、域内の経済格差への不信が、各地で噴出する。国民の不満をそらすため、対外強硬策をとる国も。摩擦や衝突を生みだす、各国の「内向き」志向が気に掛かる。

 関係悪化の最たる例が、日本と中国であろう。よりによって国交正常化40周年という節目の年に、対立を深める状況になった。

 沖縄県の尖閣諸島を9月、日本政府が国有化した。領有権を主張する中国はとりわけこれに反発。国内では民衆が暴徒化し、日系企業が襲撃された。

 先月発足した習近平新指導部が、胡錦濤国家主席の唱えた「海洋強国建設」を受け継ぐのは間違いないだろう。領海、領空を侵犯し、日本をけん制し続けている。一触即発の状況が続き、軍事衝突も懸念される。早急に話し合いの糸口を探らねばならない。

 日韓関係も険悪化した。8月、李明博(イ・ミョンバク)大統領が島根県の竹島に上陸。日本は国際司法裁判所での解決を提案しているものの、韓国は応じていない。

 日本に安倍晋三新政権が発足し、韓国でも来年2月、朴槿恵(パク・クネ)氏が大統領に就任する。歴史認識の問題で相手を刺激するような言動は避け、まずは対話を始めるべきだ。新たな体制のもと、東アジアの安定や発展へ関係改善を探りたい。

 日中韓の連携が求められる理由は、もう一つある。

 北朝鮮が長距離弾道ミサイルの発射を成功させた。国際社会の制止を振りきって強行。危険な領域に入ったといえよう。

 若い金正恩(キム・ジョンウン)氏のもとで、食糧事情など逼迫(ひっぱく)する国内事情の活路を、核兵器開発に見いだそうとしている。日中韓が米国やロシアなどとも連携し、何としても封じ込める必要がある。

 信頼醸成がおぼつかない東アジアとは対照的な地域と言えようか。欧州連合(EU)にノーベル平和賞が贈られた。

 国家間の和解と平和構築への貢献が評価された。だが、域内に核兵器を抱えた平和にとどまるのも事実。「壮大な実験」完了は遠いと言わざるを得ない。

 広がる格差によって結束が揺らぐ。ギリシャの財政危機問題はいまだ収まらず、域内の意見対立があらわになってきた。

 シリア情勢は大国の利害が対立する中、打開策が打てず、内戦が泥沼化している。停戦もすぐに崩壊し、化学兵器が使われる懸念もあるという。

 現政権を擁護するロシア、中国は解決へ積極的な役割を果たすべきだ。パレスチナ問題を含め、再選を決めたオバマ米大統領の中東戦略が問われよう。

 危機的状況にある地球環境を守る取り組みでも、国際社会の足並みはそろわない。

 気候変動枠組み条約の締約国会議(COP18)は京都議定書を存続。だが米国、中国、インドは参加しておらず、日本は延長期間から離脱した。削減義務のある国々の排出量は、世界の総排出量の14%だけになった。

 人類の共存、持続可能な発展へ。協調によって新たな秩序をつくることが、待ったなしの状況にある。

(2012年12月30日朝刊掲載)

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