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社説・コラム

社説 米空軍オスプレイ 沖縄の負担増 許されぬ

 米国は、沖縄の在日米軍基地の機能強化を加速しようというのだろうか。県民に限らず、危機感を抱かずにはいられない。

 米空軍仕様の垂直離着陸輸送機CV22オスプレイについて、ドンリー空軍長官が記者会見で沖縄配備への可能性に言及した。

 嘉手納基地(嘉手納町など)には米空軍の特殊作戦群が駐留していることから、同基地への配備が選択肢に含まれているとみられる。

 昨年、県民の反対を押し切って海兵隊仕様のMV22オスプレイ12機を普天間飛行場(宜野湾市)に配備したばかりだ。今年の夏には24機体制に拡大される予定である。

 中国を意識し、アジア太平洋地域重視の国防戦略を掲げるオバマ政権。沖縄をこの地域の「オスプレイ拠点」にするつもりのようだ。  しかし県民をいっそうの危険にさらすことにつながる。日本政府は米国の言いなりにならず、毅然(きぜん)として検討の見直しを求めるべきである。

 MV22に増して、機体の安全性への懸念が根強い。基本的な構造はほぼ同じとされるが、事故率はCV22がはるかに高いからだ。

 その使用方法に違いがあるとみる専門家は少なくない。兵員や物資を運ぶMV22とは異なり、CV22は米空軍の特殊部隊が運用する。敵地に攻め込むとの前提で、過酷な条件での使用を想定しているようだ。

 もし沖縄に配備されれば、MV22と同様に日本各地での訓練に投入されるだろう。より低空での飛行が強行されかねない。

 米軍の姿勢も問われる。MV22の配備にあたり、日米間で交わした合意が守られていない。

 沖縄県が昨年10、11月に市町村と連携して実施した目視調査によると、学校や病院もある人口密集地上空での飛行など合意違反が318件に上った。調査した総件数の6割に当たる。

 「県民の不安は一向に解消されていない」。仲井真弘多知事は昨年末、日本政府の責任で飛行実態を調査し、検証するよう要請した。

 政府と米軍双方への不信感にほかならない。ルール違反を見過ごす姿勢では、「配備ありき」の日米合意だったのではと疑われても仕方あるまい。

 CV22の配備をめぐる米空軍トップの発言に対し、小野寺五典防衛相は「沖縄の皆さんの気持ちを考えれば、このような話が出ること自体、いかがなものか」と述べている。その言葉通り、しっかり米国に対し、もの申していくべきだろう。

 普天間基地の移設問題を泥沼化させた民主党政権を、自民党は痛烈に批判してきたはずだ。だが政権を奪回した今、沖縄に対する明確なメッセージは聞こえてこない。

 2月にも安倍晋三首相の訪米が控える。日米関係を修復していくためにも、一致して中国に向き合う姿勢をオバマ大統領と確認したいところだろう。

 だが、まずは沖縄県民に負担軽減の具体策を示すのが先だ。普天間の県内移設強行や、なし崩し的なオスプレイ増強容認では、県民の信頼は程遠い。

 過剰なまでの対米追随は日本外交の思考停止を招きかねない。「言うことは言う」対等な関係性こそ同盟関係の基軸であることを忘れてはならない。

(2013年1月15日朝刊掲載)

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