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社説・コラム

社説 北朝鮮の核実験 阻止に向け国際連携を

 北朝鮮が2006、09年に続き、3回目の核実験を強行するかもしれない。国際社会が連携し、何としても阻止しなければならない。

 昨年12月の「人工衛星の打ち上げ」に対し、国連安全保障理事会は事実上のミサイル発射だとして非難し、制裁を強化する決議を採択したばかりだ。

 北朝鮮はこれに強く反発したようだ。国防委員会はおととい「われわれが継続して発射する衛星も、高い水準の核実験も、敵である米国を狙うことになる」と明言した。

 現段階では、実際に暴挙に出るのか、それはいつなのか、何ともはっきりしない。とはいえ国際社会に真っ向からかみつくような物言い自体、非難されてしかるべきだ。

 安保理には当初、拘束力を伴わない議長声明で決着させる動きもあった。北朝鮮に強い影響力を持つ中国が決議とすることを渋ったという。米国が強気の態度を崩さず、激しい交渉の末に折り合った格好だ。

 安保理が全会一致となった事実は重い。今回の結束を、さらなる挑発の阻止に生かせるか。

 2期目に入ったばかりの米オバマ政権と、中国の習近平指導部の手腕が問われる。

 その習総書記は先日、韓国の朴槿恵(パク・クネ)次期大統領の特使と面会し、「非核化が朝鮮半島の平和と安定の必須条件だ」と強調している。言葉だけでなく、次なる行動で示してほしい。

 昨年の北朝鮮のミサイル発射により、米国本土が射程に収まる現実味が増したとされる。いま国際社会が最も気掛かりなのは、北朝鮮が核弾頭の小型化に成功し、ミサイルに搭載することだ。核実験を重ねるごとに懸念は強まる。

 そうなってからでは遅い。朝鮮半島の非核化という6カ国協議の目標は、達成が極めて困難となる。日本を含む北東アジア地域の緊張はいっそう高まる。

 北朝鮮外務省は今回、核放棄を盛り込んだ05年の6カ国協議の共同声明は無効だと宣言した。朝鮮半島の非核化を論じる対話は「これ以上存在しない」とも言い切った。

 それでもなおロシアを含む5カ国が結束し、協議への復帰を強く促さなければなるまい。北朝鮮の姿勢いかんで対話の窓は開かれている、とのシグナルを絶えず送り、復帰の足がかりを残しておくことが必要だろう。

 6カ国協議は08年に決裂して以来開かれず、行き詰まっているのも事実ではある。一方で打開に向けた模索もみられる。

 ジョンソン、ニクソン両政権で核政策を担当し、クリントン政権で大統領特別補佐官を務めたモートン・ハルペリン氏は、一方的に核放棄を迫るだけでは前に進めないと指摘する。朝鮮戦争の終結と周辺国との関係正常化、北東アジアの非核地帯化などを6カ国で包括的に交渉し、条約化する方向で北朝鮮を引っ張り出すべきだとの主張だ。

 傾聴に値するのではないか。むろん実現は容易ではなかろうが、関係国は可能性を探ってもらいたい。

 日本政府としてできる努力もまだあるはずだ。6カ国協議の議長国である中国との冷え切った関係を、どう改善していくか。待ったなしの課題である拉致問題にも深く関わってくることを肝に銘じたい。

(2013年1月26日朝刊掲載)

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